研究課題/領域番号 |
21J01016
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
日高 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 1細胞解析 / 光シート顕微鏡 / 1分子蛍光イメージング / マイクロ流路デバイス |
研究実績の概要 |
本研究で実現を目指す1細胞プロテオーム解析システムに必要な技術要素として、1. マイクロ流路デバイスによる1細胞サンプルの調製、2. マイクロウェルゲルを用いたハイスループットな電気泳動、3. 光シート顕微鏡による超高感度定量の3つが挙げられ、本年度はそれぞれについて以下の通り開発・検討を行った: ・1つ目のマイクロ流路デバイス開発では、1細胞RNA-seq法の報告(Cell 2015, 161, 1202)を参考にプロトタイプとなるデバイスを作製した。微小液滴形成の検討をしたところ、当初予定していたデバイスの改良を行わなくとも各溶液の流速を調節することで液滴サイズを十分に制御できることが明らかとなった。また蛍光標識NHSエステルを用いてバルク細胞における細胞内タンパク質の標識について検討を行ったところ、SDS-PAGEによる評価ではCBB染色と同様、全分子量領域にあるタンパク質を標識できることを確認した。 ・2つ目のハイスループット電気泳動については、single-cell western blottingの報告(Nat. Methods 11, 749-755 (2014))を参考にマイクロウェルゲルおよび泳動槽を作製し、ウシ血清アルブミン溶液を用いた予備実験により電気泳動分離が可能であることが確認できている。 ・3つ目の光シート顕微鏡による超高感度定量について、まず顕微鏡開発に必要な基本知識および技術を習得した。その後LabVIEWを用いてベースとなる顕微鏡制御プログラムを開発し、ステージ制御、ウェルごとの連続画像取得、およびゲルの傾きに対応するための補正機能を実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度はマイクロ流路デバイスの開発に必要な基本技術の習得からスタートしたが、京都大学ナノテクノロジーハブ拠点による技術サポートもあり、最終的なデバイスの作製までスムーズに進めることができた。液滴サイズの制御のためにデバイスの改良が必要であると考えていたが、流速制御で十分対応可能であることが分かったため、予定していたデバイスの改良にかかる時間が不要になった。そのため当初2022年度に予定していたマイクロウェルゲルによる電気泳動法の確立および顕微鏡制御システムの開発を開始することができた。その結果マイクロウェルゲルおよび顕微鏡制御プログラムのプロトタイプ作製が完了し、今後はこれらの改良によって研究を進めることができる。以上のことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通り各技術要素の開発を引き続き進めていく。 1. マイクロ流路デバイスによる1細胞分画については細胞濃度の最適化や流路内付着によるロスを低減するためのコーティングなど、分画効率改善に向けた検討を行う。 2. マイクロウェルゲルによる電気泳動条件の最適化のため、標準タンパク質の混合液および実際の細胞溶解液を用いてさらなる条件検討を行う。また細胞内タンパク質の蛍光標識効率の評価はまだバルク細胞でしか行えていないため、1細胞サンプルの調製・電気泳動分離を確立した後に従来のSDS-PAGEでは検出できないような存在量の少ないタンパク質の標識効率についても評価する。 3. 顕微鏡制御プログラムについて、まだ実装できていない焦点合わせや画像解析機能を追加することにより、統合的な顕微鏡制御・画像解析プログラムの開発する。特に画像解析については安定した1分子計測を行うため、本研究で得られた画像に対して報告されているさまざまな粒子検出アルゴリズムを適用してみることで、もっとも信頼性の高いアルゴリズムを選定する。 以上の各技術要素開発の後、これらを組み合わせることで1細胞プロテオミクス技術の確立を目指す。
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