本研究では、1細胞免疫沈降、電気泳動によるタンパク質分離、光シート顕微鏡を用いた1分子観察による超高感度定量を組み合わせることによって、1細胞プロテオーム解析システムの開発を目指している。2023年度は実験プロトコルの最終調整と得られた泳動パターンを細胞間で比較する画像解析パイプラインの作成を行った。 まず実験プロトコルについては2022年度にある程度確立していたものの、1つのビーズ当たりに結合できるタンパク質分子数が少ないという問題を抱えていた。そのため1細胞由来のタンパク質を1つではなく複数の磁気ビーズで捕捉し、それらのビーズをペレットとしてゲルに包埋した状態で回収することで、1細胞情報を保ちながら多くのタンパク質分子を観察することが可能になった。またサンプル調製時の溶液除去をプレート遠心で行うことで、多くの1細胞サンプル(プレート当たり約100サンプル)を調製できるようになった。 画像解析についてはサンプルごとに取得された泳動パターンを細胞間で比較するため、1. 粒子検出による分子数の定量、2. マーカーとなるタンパク質バンドをもとにしたスケーリング、3. スケーリング後の泳動パターン用いた主成分解析とクラスタリング解析を行うパイプラインを作成した。これにより細胞集団内のsub-populationやそれを特徴づけるタンパク質の分子量領域を検出することができる。 開発したシステムが有効であることを示すため、異なる化合物で処理したHeLa細胞に本システムを適用したところ、主成分解析によって化合物処理ごとに泳動パターンがある程度分割できることが明らかとなった。本研究は投稿準備中であり、令和6年度中の投稿を目指している。
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