研究課題/領域番号 |
21J01349
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
Sarper Safiye Esra 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | タテジマイソギンチャク / 無性生殖 / 対称性 / 放射相称 / 左右相称 |
研究実績の概要 |
我々はタテジマイソギンチャクにおいて放射相称と左右相称個体の混在を発見した。本研究ではタテジマイソギンチャクを使い、対称性が多様化する機構を探っている。タテジマイソギンチャクは主に欠片化(親体から一部分が切除されること)による無性生殖で増え、その欠片からの再生過程で器官の再配置を行う。この再配置の機構が発生プログラムに転用され対称性多様化の起源となった可能性がある。タテジマイソギンチャクにMgCl2の一時的投与により、無性生殖の誘導に成功した。切除後の個体再生過程の器官配置を解析した。そのため胃袋、口、管溝が生じる時空間パターンを顕微鏡下でライブ観察する(反口側;Keyence顕微鏡、口側;Zeiss顕微鏡)系を構築した。その結果、以下の知見を得た。切除された欠片は、まず仮の分節構造を含む再生組織を形成する。その後、仮の分節構造から胃袋配置のパターニング(仮の分節構造が赤い蛍光タンパク質を持つ1 次胃袋、2次胃袋、管溝胃袋になる)が行われる。新たな管溝胃袋が切除した欠片の真逆に、すなわち再生組織の中心にできる。その後、新たにできた管溝胃袋の周囲から1 次胃袋と2次胃袋は逐次的に生じる。これは、新たに出来た管溝胃袋が胃袋配置を調節することを示唆する。最終的には切除した胃袋の親個体でのアイデンティティ(1次胃袋か2次胃袋か)が再生過程を得た子個体で保存されていた。これからは、切除した胃袋依存的に再生過程が進むことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タテジマイソギンチャクの再生過程の期間は個体ごとにばらついており、1ヵ月から3ヵ月かかる個体が存在している。そのため、複数個体の再生過程解析が当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
異なる胃袋配置を含む欠片の再生過程を定量的に比較解析し、胃袋配置ルールを解明する。これらの結果をまとめて、我々の数理モデル(Sarper 他 2021)を拡張し、多様な対称性が出現する機構を明らかにする。さらに、数理モデルの有効性を検証するために、再生途中の欠片の単離実験を行う。例えば 、管溝胃袋が他の胃袋の配置を調節するならば 、再生途中で管溝胃袋を単離すると、1次と2次胃袋の配置が変化すると予想される。これらの単離実験に基づきモデルの改良を行う。
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