研究実績の概要 |
高い再生能力を持つ両生類の中でも、カエルは幼生から成体になることで再生能力が著しく減退することより、再生能力回復を目指すためのモデルとして理想的であると考えられている。これまで再生能力減衰の仕組みや成体再生能力の回復について多くの研究がなされてきたが、未解明のままである部分が多い。そこで本研究では、ツメガエル幼生において四肢発生過程と再生過程のトランスクリプトーム比較解析を行い、再生特異性の高い2つの転写因子hoxc12/c13を同定し、その機能解析を行った。まず機能欠損解析を行ったところ、hoxc12またはhoxc13の発現が幼生の四肢再生において抑制されると、四肢発生や再生初期応答には影響が見られなかったのに対し、四肢再生における自脚部の形態形成が著しく阻害されることが明らかになった。その時の自脚部領域の遺伝子発現を調べると、形態形成に重要なshh, hoxa13, hoxd13などの発現パターン異常が見られた。次に成体四肢再生におけるhoxc12/c13の機能を調べた。どちらの遺伝子も成体四肢再生芽では発現が見られなかったので、hoxc12またはhoxc13を任意の場所で過剰発現させられるトランスジェニック個体を作製し、機能回復解析を行った。その結果、成体への過剰発現個体では四肢再生能力が部分的に回復することを明らかにした。具体的には、野生型成体ではスパイクと呼ばれる1本の軟骨からなる四肢が再生するのに対し、トランスジェニック個体では再生四肢先端部の軟骨が2から3本に分岐し、神経再生量が上昇していた。また成体再生組織において比較トランスクリプトーム解析を行ったところ、トランスジェニック個体では野生型と比べて相対的に発生期の遺伝子発現パターンに近づいていることが明らかになった。
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