研究課題/領域番号 |
22J00733
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
窪寺 秀彰 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員(PD) (80968280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | アストロサイト / in vivoイメージング / 光遺伝学 / 形態操作 |
研究実績の概要 |
今年度は、光遺伝学的にアストロサイトの形態を操作するツールの作成と株化細胞への導入、および、in vivo観察による神経細胞活動の計測から解析までの実験スキームの構築を達成した。具体的な成果は以下の通りである。 青色光照射によってアクチン細胞骨格の動態を操作できるタンパク質を、アストロサイト特異的に発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)を作成した。加えて、アストロサイトの形態を観察するために 緑色蛍光タンパク質mNeonGreenをアストロサイトで発現させるAAVを作成した。これらのタンパク質をアストロサイト様株化細胞に発現させて青色光を照射したところ、細胞の形態が光照射依存的に変化する様子が観察された。また、アストロサイトの形態変化を誘導した際の神経細胞やアストロサイトの活動を計測するために、それらの細胞に蛍光カルシウムセンサーであるGCaMP6fを発現させるAAVを作成した。これらのAAVを用いたアストロサイトおよび神経細胞のカルシウムイメージングをGRINレンズを用いることで覚醒マウスの脳深部領域で実行できる実験系を確立した。さらに、カルシウムイメージングから得られた画像データを解析し、神経細胞やアストロサイトの活動をシングルセルレベルまたはカルシウムイベントレベルで定量的に評価する系も確立した。 日本神経科学大会やグリアデコード領域会議に参加し、これらの研究成果の発表や他の研究者との情報交換を行うことで、実験手法や方針の改善を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アストロサイトの形態操作および観察、神経細胞活動の計測に必要なAAVを準備した。アストロサイトの形態操作ツールはアストロサイトの微細突起特異的に発現させる予定だったが、その前段階としてアストロサイト全体に発現させる実験が必要であると判断したため、実験を追加して実行した。アストロサイトの形態操作時に神経細胞活動を計測するために行う急性脳スライス作成の予備実験は着手した段階である。急性脳スライス作成と比較してin vivoイメージングの方が要求される技術や設備が高度であるため、in vivoイメージングの実験系の構築および技術の習得に時間をかけた。その結果として、in vivoイメージングによる神経細胞の活動の計測から評価までの実験スキームの構築が完了した。 上記の進捗状況は、当初の計画した進行度とほぼ同等である。
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今後の研究の推進方策 |
急性脳スライス・in vivoイメージングを利用してアストロサイトの形態操作ツールがex vivo/in vivoの実験系においても機能することを確かめる。その後、急性脳スライスを用いて電気生理学的実験を行い、アストロサイトの形態操作がシナプス長期増強の発生に与える影響を検証する。加えて、二光子顕微鏡を用いてアストロサイトの形態変化が神経細胞活動とスパインの形態に与える影響を明らかにする。 得られたデータは学会で発表する。学会で他の研究者と情報交換を行い、研究方針を随時調整する。
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