研究課題/領域番号 |
22KJ3145
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石橋 朋樹 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞キラリティ / 左右非対称性形成 |
研究実績の概要 |
2023年度は,2022年度に発見した単細胞レベルの左右非対称性に影響を及ぼす薬剤の効果をより詳細に解析した.アクトミオシン細胞骨格制御系が単細胞レベルの左右非対称性形成に関わる力学メカニズムを共同研究から明らかにした.ここで提唱されたアクティブカイラル流体力学モデルの実験的検証を行い,結果をまとめて論文投稿に至った. また,2022年度に発見した画期的な時計回りの集団回転運動についても継続的な解析を行った.薬剤スクリーニングから,アクトミオシン細胞骨格と微小管の両方が多細胞キラリティに関与することを見出していた.特に,微小管が多細胞集団回転の方向を逆転させるという結果が得られており,この力学メカニズムの説明に注力した.数理生物学者との共同研究から,多細胞回転を説明する数理モデルを構築した.具体的には,細胞間の力学的なインタラクションが回転方向決定に関わるというモデルで,これまでに観察した現象をほとんど完全に説明できている.現在は,構築した数理モデルのパラメータ調整を行っている.論文執筆も現在進行中であり,数理モデルの完成次第,投稿に移る. また,研究実施計画にあった細胞チューブの構築条件の探索も行った.マトリゲルもしくはコラーゲンゲル中で包埋培養しても,チューブ構造の自発的な構築は怒らなかった.一方で,細胞を帯状に培養したのちに,コラーゲンゲルを上から重層すると,管状の構造をとりうる可能性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず,単細胞キラリティについて,数理モデルを構築し,論文投稿まで至った.当初は,2024年度中に1報めの論文投稿を行う予定だったので,これだけで計画以上の進展があったといえる. また,当初の予定であった多細胞キラリティ研究についてもその力学メカニズム解明に重要なヒントとなる結果を多数得ており,それを下に数理モデル開発にまで達した.論文の執筆を開始しており,2報めの論文も2024年度中に投稿できる目処が立っているため,こちらも当初の計画以上の進展を見せている.
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今後の研究の推進方策 |
本計画では,数理的に単細胞キラリティ・多細胞キラリティをモデル化することも中目的としていた.2024年度は,構築した数理モデルの完成を目指して研究を行う. また,Caco-2細胞を用いた細胞チューブの構築にも挑む.すなわち,管状器官の左右非対称性形成をin vitroで再構成することを試みる.現在の帯状の培養方法のさらなる改善を目指して,立体培養の専門家との共同研究を計画している.また,チューブの再構成のため,当初の計画にあったPDMSを用いたマイクロデバイスの開発も行う.こちらも,マイクロデバイスの専門家との共同研究を計画している.
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