研究課題/領域番号 |
21J01537
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
中沢 禎文 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 有機フッ素化合物 / PFOS・PFOA / 活性炭 / 吸着量 / 脱着 / 浄水プロセス |
研究実績の概要 |
1.浄水プロセス中の有機フッ素化合物 (PFAS) 消長の実態調査:活性炭処理を導入している国内の実浄水場において21種のPFASの処理性を調査した。粒状活性炭 (GAC) を導入している浄水場では流入水から6種のカルボン酸PFAS (炭素数4~9) と3種のスルホン酸PFAS (炭素数4、6、8) が検出された。PFASの除去率はPFASの炭素数 (鎖長) により異なり、鎖長が大きいほど除去率が高かった。長鎖PFASは除去率の月変動がほとんどないものの、鎖長が短いほど除去率が大きく変動し、鎖長の最も短いPFBA (炭素数4) では除去率が負となることがあり脱着したものと考えられた。生物活性炭 (BAC) を導入している浄水場でも流入水から上述のPFASが検出された。当該浄水場では特にスルホン酸PFASの濃度が高く、炭素数が比較的大きいPFOS (炭素数8) でも除去率が-360 %~60 %を推移しており、除去率が負となる期間には脱着したものと考えられた。 2.PFASの活性炭からの脱着機序:浄水場で使用された活性炭に吸着したPFASの水への脱着性を調査した。まず溶媒抽出により活性炭に吸着したPFAS量の推定を試みた。抽出量は溶媒としてメタノールを用いて60 分間超音波処理した場合に最大となった。一方、活性炭を水にさらした場合に最大限脱着する量の溶媒抽出量に対する比 (脱着比) はPFASの鎖長により異なった。鎖長が小さいPFAS (炭素数4~7) は短時間で脱着比が1に近づいたが、鎖長が大きいPFAS (炭素数8~9) は時間が充分に経過しても脱着比は0.5に満たなかった。鎖長が大きいほど疎水性が強くLog Dが大きい傾向にあり、Log Dが1より小さいPFASは脱着しやすいがLog Dが1より大きいPFASはLog Dが大きいほど脱着しにくい傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.浄水場において、カルボン酸PFASおよびスルホン酸PFASの典型的な21種のPFASの検出状況と除去性を調査し、その実態を明らかにした。 2.PFASの水への脱着性を調査し、水への脱着しやすさ (水に最大限脱着する量と溶媒抽出量の比) と親疎水性との関連を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1.浄水場におけるPFASの実態調査を進める。1年目に調査対象とした典型的な21種のPFASに加えて、新たにGenXやADONA等を含む11種のPFASも対象として調査を行い、さらに異性体の同定に取り組む。また、PFASの物性と吸脱着・破過のしやすさとの関連を明らかにするため、複数ある活性炭吸着池の中から特定の吸着池を個別に調査する。 2.継続してPFASの脱着比の評価を行い、脱着性とPFAS物性、水質との関連性を検討する。また、カラム実験を行い、PFAS脱着速度を評価するとともに、活性炭層内のPFASの移動性を検討する。さらに、バッチ吸脱着実験を行い、高塩基度ポリ塩化アルミニウムによる前処理がPFAS吸脱着性におよぼす影響とPFAS鎖長との関連性を検討する。
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