1.粒状活性炭(GAC)に吸着した有機フッ素化合物(PFAS)の脱着速度におよぼす無機イオンの影響を調査した。浄水場で吸着処理に使用されることにより6種のカルボン酸類PFAS(C4-C9)および3種のスルホン酸類PFAS(C4、C6、C8)が負荷されたGACを用い、イオン濃度の異なる水を順に通水して各PFASの脱着濃度を経時的に測定した。GACに重炭酸Na水(TOC<0.2 mg/L、pH7.4、アルカリ度50)を通水した場合、カルボン酸類PFASはいずれも脱着した。これに対し、無機イオンが浄水場原水と同濃度となるよう調整したイオン水をGACに通水した場合、いずれのPFASも脱着濃度がより低くなり、この傾向は鎖長が長いほど顕著に見られた。さらに検討を進め、カチオン種のPFAS脱着への影響を比較すると、Naに比べCaイオンがPFAS脱着を阻害することが明らかになった。多価カチオンであるCaはPFASや活性炭表面の官能基と結合し斥力を低下させることでPFASと活性炭表面の親和力が増加し、脱着を阻害したと考えられた。 2.浄水場におけるPFOAおよびPFOSの分岐異性体の存在実態を調査した。PFOA/PFOSが高濃度で検出された日本国内7か所の浄水場水源においてPFOAおよびPFOSの異性体を分別定量した結果、PFOAは主に2種(直鎖体、イソ体)、PFOSは主に3種(直鎖体、イソ体、炭素鎖末端の1つ手前から分岐する5分岐鎖体)の異性体が検出された。PFOAは水源によりイソ体の存在割合が大幅に異なり、イソ体の割合は3-92%であった。PFOSの分岐異性体の割合は13-41%であった。また、直鎖体と分岐異性体の浄水処理過程での除去性はほぼ同じであり、凝集沈澱砂ろ過およびオゾン処理ではほとんど除去されず、GAC吸着により除去された(除去率>85%)。
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