研究課題/領域番号 |
21J01784
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
熊谷 尚悟 国立研究開発法人国立がん研究センター, 国立がん研究センター 細胞情報学分野, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | がん免疫 |
研究実績の概要 |
これまで腫瘍が免疫応答に与える影響が注目されてきた。最近では複数腫瘍転移病変間だけではなく腫瘍内不均一性と免疫チェックポイント阻害剤の奏効との関係について報告されている。Mismatch repair (MMR) deficientである腫瘍は免疫チェックポイント阻害剤が奏効すると報告されているが、腫瘍不均一性が起きやすく、転移病変により治療奏効に差があることが知られている。起源が同じと思われる腫瘍でも転移病変のゲノムプロファイルや免疫応答が異なることが知られているが、転移先臓器特有の免疫応答や代謝状況を含めた微小環境ががんの進化・腫瘍不均一性にどのように影響を及ぼすかは明らかになっていない。そこで様々な臓器の微小環境が、がんの進化・腫瘍不均一性に影響を及ぼし、悪性化や、がん治療の耐性化にどのような変化をもたらすかを詳らかにすることを本研究の目的とした。免疫チェックポイント阻害剤を使用したMMR deficient腫瘍症例の治療前の検体を60症例ほど収集し、DNA/RNAを抽出し、シークエンスを実施した。また、同症例の治療前のFFPEサンプルを用いて多重免疫染色を実施した。マウスがん細胞株にMSH2をクリスパーCas9システムを用いてノックアウトした。また、皮下腫瘍モデル、肝転移モデル、脳転移モデルなどのマウスモデルを確立した。MSH2 KO細胞株を長期培養しMSI細胞株を作成した。今後、野生型マウスに移植し免疫応答を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体収集やin vitroの解析など、順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
<In vitroモデル>各臓器特異的な細胞や代謝産物とセルラインを共培養するin vitroモデルを用いて、活性化した免疫細胞や代謝産物ががん細胞株の遺伝子発現の変化や実際の遺伝子変異に変化を与えないかを検討する。通常培養した場合と臓器特異的細胞や代謝産物と共培養した場合とで比較をする。がん細胞のDNA/RNAからエクソーム解析・コピーナンバー解析・トランスクリプトーム解析を行い遺伝子変異・コピーナンバー・発現に違いがあるかを検討する。また、がん細胞の代謝産物もLC-MSで解析する。 <In vivoモデル>In vitroの結果を踏まえて野生型マウスもしくは各種ノックアウトマウスの皮下腫瘍モデル、肝転移モデル、肺転移モデル、脳転移モデルを作成し、MSH2ノックアウト細胞株を移植し経過を追う。その後、各腫瘍よりDNA/RNAや代謝産物を抽出してin vitroと同様の比較検討を行う。病理学的な各種免疫浸潤も観察し、形態学的な不均一性・さらにはそれに伴う遺伝子変異や発現の不均一性も検討する。また、腫瘍浸潤免疫細胞を抽出しフローサイトメトリーでフェノタイプを確認する。 <臨床検体での解析>In vitro/in vivoの結果を受けて、実際の臨床検体(MMR deficientの腫瘍、原発巣と肝転移・肺転移・脳転移などを同時切除した腫瘍など)からDNA/RNA、腫瘍浸潤免疫細胞、代謝産物を抽出し評価する。
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