これまで腫瘍が免疫応答に与える影響が注目されてきた。起源が同じと思われる腫瘍でも転移病変のゲノムプロファイルや免疫応答が異なることが知られているが、転移先臓器特有の免疫応答や代謝状況を含めた微小環境ががんの進化・腫瘍不均一性にどのように影響を及ぼすかは明らかになっていない。そこで様々な臓器の微小環境が、がんの進化・腫瘍不均一性に影響を及ぼし、悪性化や、がん治療の耐性化にどのような変化をもたらすかをゲノム不安定性が生み出されるMSI high腫瘍sampleやモデルを用いて詳らかにすることを本研究の目的とした。免疫チェックポイント阻害剤を使用したMMR deficient腫瘍症例の治療前の検体をさらに追加し、合計100症例ほど収集し、DNA/RNAを抽出し、シークエンスを実施した。また、同症例の治療前のFFPEサンプルを用いて多重免疫染色を実施した。マウスがん細胞株にMSH2をクリスパーCas9システムを用いてノックアウトした。また、皮下腫瘍モデル、肝転移モデル、脳転移モデルなどのマウスモデルを確立した。MSH2 KO細胞株を長期培養しMSI細胞株を作成し、各種免疫細胞をknock-outしたマウスに移植し、がん遺伝子異常の進化の系図を検討した。臨床検体解析とマウス実験のconcordanceもおおむね取れており、腫瘍浸潤CD8陽性t細胞に発現するPD-1が高いと免疫治療に奏功することが判明した。今後、マウスモデルと臨床検体解析の結果得られた事象を合わせて解析し、投稿作業に入る予定である。
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