紫外線C波(UV-C)が細胞の不死化に与える影響を明らかにすることを目的としている。マウス胎仔線維芽細胞(MEF)は分裂を繰り返すとそのほとんどは分裂を停止するが、一部はゲノム不安定性とARF/p53変異を伴ってやがて不死化する。不死化の過程ではDNA複製に起因したDNA二本鎖切断が蓄積している。本研究ではMEFをモデルとして用いた。 継代回数3回のMEFにUV-Cを照射し培養を続けると、2週間後には照射前と同程度の増殖速度を(細胞集団として)回復し、その後も分裂、増殖を続けた。UV-Cを照射していないコントロール細胞では同定度の増殖速度の回復に2週間以上を要した。このことからUV-C照射により細胞不死化が早く起こることがわかった。 UV-C照射によりDNA上には隣り合ったピリミジン塩基間で(6-4)光産物やシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)といったDNA損傷が主に生成される。MEFにUV-Cを照射し、免疫蛍光染色法により細胞内に存在するこれらの損傷を検出したところ、照射直後に比べて照射後24時間では(6-4)光産物はそのほとんどが修復されていたのに対し、CPDは大部分が修復されずに残っており、72時間後もそのまだ半数が残っていた。DNA二本鎖切断のマーカーである53BP1タンパク質は照射後24時間で一過性に集積が見られた。このことから、DNA二本鎖切断はCPDの残存に起因して生成されたことが推測される。
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