研究課題/領域番号 |
22KJ3159
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
尾張 拓也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター 免疫TR分野, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 膀胱がん / がん免疫療法耐性 / 免疫逃避 / BBN誘導膀胱がん / 同所性マウスモデル |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト膀胱がん手術検体ならびに N-Butyl-N-(4- hydroxybutyl)nitrosamine (BBN)誘導膀胱がんマウスモデルを用い、膀胱がんの発がん・悪性化過程における免疫療法に対する耐性獲得機序を解明することを目的とし、研究を遂行する。初年度において、BBN誘導マウス膀胱がん自然発がんモデルを用いた膀胱がん発がん・悪性化過程における遺伝子変異・遺伝子発現変化の詳細な解析を行い、同モデルがヒト進行性膀胱がんと遺伝子変異が極めて類似しており、BBNの長期投与により悪性度の高いとされるBasal-Squamous subtype 膀胱がんを形成することを確認した。さらに、進行過程において発現が上昇する特有の遺伝子発現異常が免疫チェックポイント阻害剤耐性獲得に関連することを明らかにした。ヒト膀胱がん手術検体において、同定した遺伝子発現異常が腫瘍免疫微小環境に与える影響を多重免疫染色による解析を行い、同定した遺伝子高発現腫瘍では腫瘍中心部に CD8陽性 T細胞の浸潤が抑制される “Immune excluded phenotype” を示すことを同定した。本研究で得られた成果により、膀胱がんの進行の抑制および免疫チェックポイント阻害剤耐性の克服を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、RNAシークエンスおよび whole exome シークエンスにより、BBNを 16週以上投与により予後不良かつ免疫療法に対する奏効率が低いとされる Basal-Squamous subtype 膀胱腫瘍を発がんすることを明らかにした。また、BBNを長期投与した自然発がんモデルにおける免疫療法耐性に関与する遺伝子発現異常と共通する遺伝子をヒト膀胱がんにおける抗 PD-L1 抗体抵抗性に寄与する遺伝子の探索し、TIMP1発現異常に着目した。ヒト膀胱がん手術検体を用いた多重免疫染色により、TIMP1 高発現Basal-Squamous subtype 膀胱腫瘍では、腫瘍中心部に CD8陽性 T細胞の浸潤が抑制される “Immune excluded phenotype” を示すことを明らかにした。さらに、TIMP1 強制発現膀胱がん細胞株の樹立のうえ、マウス膀胱内へ直接注入することによる同所性マウスモデルを作製した。同モデルにおいても、強制発現膀胱腫瘍では 抗PD-1抗体治療抵抗性を認め、CD8陽性 T細胞の腫瘍内への浸潤の抑制および cancer-associated fibroblast の浸潤の亢進を確認した。これまでに、膀胱がんにおける免疫逃避、免疫療法耐性獲得に関与する特有の遺伝子発現異常および耐性機序を解明できたため本研究は概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において得られた膀胱がんにおける免疫逃避、免疫療法耐性獲得に関与が示唆される TIMP1発現異常腫瘍が“Immune excluded phenotype”を示す機序の解明を行う。BBN投与間隔の異なる個体の膀胱腫瘍を用いて、シングルセル RNAシークエンスにより膀胱がん進行過程における TIMP1発現細胞の経時的変化を明らかにする。また、stageの異なるヒト膀胱がん手術検体を用いたシングルセル RNAシークエンスも並行して解析を行い、膀胱がん進行に TIMP1が与える影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究計画と若干の変更が生じたため
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