研究課題/領域番号 |
19J40070
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
矢原 寛子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, ゲノム医科学プロジェクト, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-01-06 – 2023-03-31
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キーワード | 顎骨骨髄炎 / 遺伝的要因 / バイオマーカー / 微生物叢 |
研究実績の概要 |
顎骨骨髄炎の中でも免疫系の恒常性維持に異常を来した病態を疾患概念として確立し、従来口腔の疾病で第一に挙げられた細菌性と区分するバイオマーカーを見出し、的確な診断と適切な治療を可能にすることを目指している。本年度は、①疾患に関する簡便で臨床応用可能なバイオマーカーを明らかにし、②疾患の環境因子として、特徴的で発症の引き金になり得る口腔内微生物叢を明らかにするために、昨年度構築した共同研究体制により、臨床情報の共有と、末梢血採血と唾液採取による検体収集を迅速に行い、全4施設より2セット合計35症例を確保することができた。 その上で、採取した血液の一部はリンパ球サブセット検査を行い、データを得ることができた。また、血液からのRNA抽出プロトコールを確立し、RNA-seqを行うためにRNA抽出を行った。第1セットは、クオリティーチェックを通過し、グロビン除去を行って、RNA-seqまで完了した。現在第2セットが進行中である。また、サイトカインパネルを用いたマルチプレックスアレイでの血清サイトカインの発現検討については、来年度早々に実施する準備を整えた。 採取した唾液は、専用の酵素法によるDNA抽出を行い、第1セットを完了することができた。来年度に入り次第、もう1セットも同様にDNA抽出を行い、ショットガンメタゲノム解読を行う。 引き続きデータ取得を進め、共同研究者と解析データを吟味し、研究計画書に記載した複数の観点からバイオマーカーの探索を進める予定である。 また、上記の研究が予定通り進捗しているのと並行して、発展的な研究として、骨髄炎の中でも薬剤性に生じるMRONJ(薬剤関連顎骨壊死)にも焦点を当て、唾液のショットガンメタゲノム解読によりMRONJに関連する微生物叢と機能遺伝子を探る共同研究を行った。この成果をまとめた論文を国際誌に発表し、口腔外科学会の優秀ポスター賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度の研究計画では、主施設および共同研究施設における検体採取が終了し、一部のデータ取得に留まると予想されたが、これまでのネットワークを利用した連携で、症例に関する情報共有と検体収集を迅速に行い、一旦終了とすることができた。 更に、採取した血液のリンパ球サブセット検査を終了し、データを得ることができた。また、RNA抽出プロトコールを確立し、RNA-seqを行うためにRNA抽出を行い、一部はグロビン除去を行ってRNA-seqまで完了した。また、サイトカインパネルを用いたマルチプレックスアレイでの血清サイトカインの発現検討についても、来年度早々に実施する準備が整った。 採取した唾液は、一部のDNA抽出が終了した。残りのDNA抽出を行い、ショットガンメタゲノム解読を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
収集した検体のうち血清については、来年度早々にマルチプレックスサスペンションアレイを用いて発現定量解析を行う。血液から抽出したRNAについては、残りのサンプルのRNA-Seqを、最低解読量を保証してシークエンシングする。また、残りの唾液サンプルからDNAを抽出し、予算の範囲内でショットガンメタゲノム解読する。 なお、今年度は7月から出産・育児のため研究を一時中断する。 COVID-19の影響で研究室に足を運ぶことのできない状況と学会参加の制限が生じているが、外注およびオンラインでの打ち合わせ・議論を適宜利用しつつ、円滑な研究の推進と研究成果の発表に努める。
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