研究課題
全身の骨髄炎の中でも、顎骨に発生するものには、細菌性の感染症と、非細菌性で自己免疫性の病態が混在しており、その違いを分子レベルで探索する研究に取り組んでいる。これまでに、骨髄炎の遺伝的背景としてのHLA/KIR領域の遺伝多型や、全血RNA-Seqデータによる遺伝子発現の違いを調べ、結果を報告してきた。そのnext stepとして本年度は、発症の引き金となり得る、患者に特徴的な微生物叢が存在するかどうかを明らかにしたいと考え、研究を進めた。昨年度まで実施した先の研究で血液検体の採集と同時に採取した唾液検体からbulk DNA抽出を行い、ショットガンメタゲノム解読を行った。非細菌性骨髄炎10サンプルと細菌性骨髄炎5サンプル、健常者5サンプルを、1サンプル10Gb以上の厚みで解読した。データ解析の結果、存在量に有意な群間差のあった菌種は4菌種で、そのうち細菌性骨髄炎で有意に増えている細菌は、Mogibacteriumのみであった。一方、非細菌性骨髄炎で有意に増えている細菌はなかった。細菌の存在量の指標を2つ(sequence abundanceとtaxonomic abundance)計算して比較したところ、Mogibacteriumはどちらでも同様の結果を示した。一方で、これまでに口腔内及び顎骨の感染症と関係すると言われ、骨髄炎でも多く報告されてきたActinomycesは、2つの指標の乖離が大きく、解釈に注意が必要だと分かった。また、今回見つかったMogibacteriumを含む47細菌属は従来、健常者の唾液微生物叢の中に見つかっていない菌であり、Mogibacteriumが疾患に特異的に関連する菌であることを示唆していた。以上の結果をまとめた論文が国際誌にアクセプトされ、口腔外科学会では優秀賞を受賞した。
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PLOS ONE
巻: 19 ページ: -
10.1371/journal.pone.0302569