研究課題/領域番号 |
21J01171
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
矢澤 亜季 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター 疫学予防研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ソーシャルキャピタル / 幼少期の逆境体験 / 低中所得国 / ベトナム / 心血管疾患 |
研究実績の概要 |
本研究は、ベトナム農村部における非感染性疾患のリスク要因を探究することを目的に、研究A:ベトナム農村部におけるソーシャルキャピタルと肥満・高血圧・糖尿病・抑うつの関連を明らかにする、研究B:幼少期の逆境環境がどの程度成人期のソーシャルキャピタルを介して健康を決定するか明らかにする、という2つのテーマを設定している。これまでに、2019~20年にベトナム南部で実施したカインホア心血管疾患コホート研究(KHCS)のベースライン調査に参加した40から59歳の3000名を対象に、以下の横断研究を実施した。現在以下の論文が査読中である。 1.幼少期における両親との離別経験と過体重・肥満及び痩せ:1955~75年のベトナム戦争では200万人もの民間人が犠牲となり、その結果調査参加者の2割が幼少期に両親との離別体験を有すことがわかった。解析の結果、特に3歳未満にそうした経験をした人でやせの割合が多い傾向があることが示された。幼少期の逆境体験は一般に肥満のリスク要因として認知されているが、未だ貧困や低栄養のリスクを抱える人が少なくないベトナム農村部においてはやせと関連している可能性がある。 2.幼少期における両親との離別経験とうつ症状:上述の研究と同様に両親との離別体験を定義し、うつ症状との関連を検討した。対象者の11%がうつ症状を呈しており、両親との離別体験がある人でその割合が高いことが明らかになった。 3.ソーシャル・キャピタルとうつ症状:ソーシャル・キャピタルを認知的ソーシャル・キャピタル(互助的な活動に寄与する規範、価値観など)と構造的ソーシャル・キャピタル(互助的な活動に寄与するネットワークそのものや社会参加など)の二側面から定義し、うつ症状との関連を検討した結果、認知的ソーシャル・キャピタル、構造的ソーシャルキャピタル共にうつ症状のリスクと負に関連することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の研究計画通りに、カインホア心血管疾患コホート研究(KHCS)のデータを用いた分析及び論文化は進んでいる。さらに、留学先であるハーバード大学においてアクセスのあるデータの解析及び論文化も進めており、発展的な統計解析手法の習得にもつながっている。 フォローアップ調査に関しては、新型コロナウイルスの流行により、当初予定していた2022年ではなく2023年に実施する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
当初は2、3年目に留学する予定でいたが、受け入れ先として考えていたNatalie Slopen教授が、偶然当時の所属先であったメリーランド大学から2020年度私が所属していたハーバード大学に移動になったことから、滞在を延長する形で1、2年目に留学をすることにした。この変更によって研究計画自体に変更は必要なく、今後も申請時の研究計画通りに進めていく予定である。新型コロナウイルスの流行により日本から国際学会に参加することが困難な状況が続くかもしれないため、3年目に予定していた国際学会での発表は、2年目に前倒しする。
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