研究課題/領域番号 |
22J01713
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
特別研究員 |
水野 隼斗 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 小児脳腫瘍 / SHH型髄芽腫 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / 高分子ミセル |
研究実績の概要 |
本研究では、小脳顆粒細胞から生じるSHH型髄芽腫を小児脳腫瘍のモデル系として用い、その形成過程で生じる腫瘍細胞による神経細胞のハイジャックが、①いつ、どの神経細胞に生じるのか、そして②腫瘍と神経細胞の相互作用が腫瘍進展にどのような影響を与えるのかを検証することを目的とする。さらに、小児腫瘍細胞を選択的に攻撃することで、神経細胞への影響を最低限に抑えつつ、効率的に治療を行うためのナノキャリアの開発を目的とした。 昨年度までに、腫瘍細胞表面に発現したCD276タンパクに対する抗体をナノキャリア表面に結合する手法を提案し、概念実証を行った。しかし、この時用いていたナノキャリアはモデル高分子ミセルであり、薬剤を担持していなかった。今年度は、ミセルを構成する高分子を再設計・合成し、実際に核酸医薬を担持できるミセルを作成した。具体的には、ポリエチレングリコールと正電荷を有するpoly(lysine-triphenylphosphonium)から構成されるブロックコポリマー、PEG-Poly(Lysine-TPP)を合成し、これを核酸の不電荷と静電相互作用させることでミセルを形成させた。このミセルの安定性を、生体内の温度、塩濃度、ポリアニオン、タンパク濃度を模倣した系で評価した結果、従来使われていたポリマーに比べて有意に高い安定性を示した。これは、ポリマー側鎖のTPPが核酸と強く静電相互作用した他、TPP-TPP間にも疎水性相互作用による引力が生じたからであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り高分子ミセルの設計・合成が完了し、in vitroレベルでの安定性評価や機能性評価も終了している。 一方で、ミセルに搭載する予定のASOが未だ決定できていない。その背景には当初適切と思われていたASOの配列のGli2遺伝子ノックダウン効率が低かったことがある。現在本研究で見つかった他のSHHシグナリングの主軸となるターゲットをノックダウンできるASO配列を調査中の段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後最優先でSHH型髄芽腫の進展に大きく貢献していると思われるタンパクのノックダウンを進め、これによる腫瘍進展への影響を綿密に調査する。 そのためには、これまでにGli2遺伝子に対するASOのノックダウン効率が思わしくなかったことの原因調査や、これまでにASOを用いたノックダウン実績のあるタンパクの調査を行なっていく。 ASOの配列が決まり次第、これを既に合成済みの高分子を用いてミセル内に封入し、in vitroレベルでノックダウンによる腫瘍進展への影響調査と、in vivoでの高分子ミセルの血液脳関門透過性能、安定性、そして腫瘍細胞ターゲティング能の評価を行なっていく。
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