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2023 年度 実施状況報告書

小児脳腫瘍と脳内微小環境のコミュニケーションによる腫瘍進展メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ3168
配分区分基金
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

水野 隼斗  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワード高分子ミセル / SHH型髄芽腫 / Gli2 / 小児脳腫瘍 / アンチセンスオリゴヌクレオチド
研究実績の概要

昨年度までに、腫瘍細胞表面に発現したCD276タンパクに対する抗体をナノキャリア表面に結合する手法を提案し、概念実証を行った。しかし、この時用いていた ナノキャリアはモデル高分子ミセルであり、薬剤を担持していなかった。今年度は、ミセルを構成する高分子を再設計・合成し、実際に核酸医薬を担持できるミ セルを作成した。具体的には、ポリエチレングリコールと正電荷を有するpoly(lysine-triphenylphosphonium)から構成されるブロックコポリマー、PEG- Poly(Lysine-TPP)を合成し、これを核酸の不電荷と静電相互作用させることでミセルを形成させた。このミセルの安定性を、生体内の温度、塩濃度、ポリアニオ ン、タンパク濃度を模倣した系で評価した結果、従来使われていたポリマーに比べて有意に高い安定性を示した。これは、ポリマー側鎖のTPPが核酸と強く静電相 互作用した他、TPP-TPP間にも疎水性相互作用による引力が生じたからであると考えられる。現在このミセルに、昨年度作成したCD276 Fabを表面修飾し、細胞導 入効率を検証している。 ミセルに内包する核酸についての検討も行った。核酸の種類としては、ガン遺伝子をサイレンスするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を検討中であり、こ れを用いることで腫瘍細胞でのみ薬効が発揮されることが期待される。具体的には、SHHシグナル経路の主軸にある転写因子のGLI2 mRNA の配列と相補的な配列を 有する長さ20塩基のASOを用意した。これを実際に小児脳腫瘍細胞のDAOYにトランスフェクションし、GLI2のノックダウン効率をウェスタンブロットにて確認し た。結果、GLI2のノックダウンは確認されたが、効率はさほど高くなく、およそGLI2発現量がおよそ20%しか減少しないことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定よりも早い段階で高分子ミセルの設計・合成が完了し、in vitroレベルでの安定性評価や機能性評価も終了している。 一方で、ミセルに搭載する予定のASOが未だ決定できていない。その背景には当初適切と思われていたASOの配列のGli2遺伝子ノックダウン効率が低かったことが ある。現在本研究で見つかった他のSHHシグナリングの主軸となるターゲットをノックダウンできるASO配列を調査中の段階にある。

今後の研究の推進方策

今後最優先でSHH型髄芽腫の進展に大きく貢献していると思われるタンパクのノックダウンを進め、これによる腫瘍進展への影響を綿密に調査する。 そのためには、これまでにGli2遺伝子に対するASOのノックダウン効率が思わしくなかったことの原因調査や、これまでにASOを用いたノックダウン実績のあるタ ンパクの調査を行なっていく。
ASOの配列が決まり次第、これを既に合成済みの高分子を用いてミセル内に封入し、in vitroレベルでノックダウンによる腫瘍進展への影響調査と、in vivoでの 高分子ミセルの血液脳関門透過性能、安定性、そして腫瘍細胞ターゲティング能の評価を行なっていく。

次年度使用額が生じた理由

年度末に注文依頼をしていた物品(消耗品)がリコールになってしまい、購入することができなかった。
来年度に代替品を購入し使用することを考えている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Ligand Installation to Polymeric Micelles for Pediatric Brain Tumor Targeting2023

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Takayoshi、Mizuno Hayato Laurence、Norimatsu Jumpei、Obara Takumi、Cabral Horacio、Tsumoto Kouhei、Nakakido Makoto、Kawauchi Daisuke、Anraku Yasutaka
    • 雑誌名

      Polymers

      巻: 15 ページ: 1808~1808

    • DOI

      10.3390/polym15071808

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of nanomachines efficiently crossing the blood-brain barrier2023

    • 著者名/発表者名
      Mizuno Hayato Laurence、Anraku Yasutaka
    • 雑誌名

      Drug Delivery System

      巻: 38 ページ: 100~108

    • DOI

      10.2745/dds.38.100

  • [学会発表] High-performance MRI nanoprobe with BBB permeability2024

    • 著者名/発表者名
      Hayato L. Mizuno, Ichio Aoki, Kazunori Kataoka, Yasutaka Anraku
    • 学会等名
      The 11th Takeda Science Foundation Symposium on PharmaSciences
    • 国際学会
  • [学会発表] 若手バイオマテリアル研究者の意思決定の軌跡2023

    • 著者名/発表者名
      水野隼斗
    • 学会等名
      第33回バイオマテリアル若手研究会
    • 招待講演
  • [産業財産権] ホスホニウム基を有するカチオン性ポリマーおよびこれを含むポリマー粒子または医薬組成物2023

    • 発明者名
      安楽泰孝、乗松純平、水野隼斗
    • 権利者名
      東京大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-066279

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公開日: 2024-12-25  

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