研究課題
本研究は、大型底生有孔虫(LBF)・共生藻・共生細菌の三者共生系を、物質供給と環境ストレス耐性の観点から明らかにするために、1)大型底生有孔虫における分解酵素生産者の解明、および、2)高温・強光条件下での共生微生物群集の変化の検証を行うものである。当初の計画では、1)LBFのSoritidae科の無性生殖個体を用いた飼育実験、2)夏季・冬季のフィールド調査及び成熟LBF個体の採取を予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、飼育実験を来年度に延期し、来年度実施予定であった環境中のLBFと共生藻の分布に関する研究調査を実施した。ア)飼育実験で使用するLBF無性生殖個体1個体からのDNA抽出法を確立した。市販のDNA精製マトリックスを用い、簡便で安全にDNA抽出が可能であることを確認し、次年度以降の飼育個体に適用予定である。イ)無性生殖個体(1グループ)と少数の成熟した個体を用いた、予察的な昇温・降温実験を行った。飼育個体はDNA分析に向けて保存中である。ウ)沖縄県阿嘉島周辺で深度別に成熟した有孔虫を採取し、共生藻群集の違いを調査した。リーフフラットのような浅場と深場では光量などが異なるが、同じ種の有孔虫であっても共生藻が明らかに異なり、浅場では検出されなかった共生藻が深場ではかなりメジャーであることが明らかになった。同じサンプルセットの共生微生物に関して現在データ解析中である。エ)沖縄島周辺LBFの共生藻群集と周囲の堆積物・海水中の同種の微細藻類との関係を明らかにするため、Soritidae科LBF、堆積物・海水の環境DNAの分析を行った。堆積物と海水は共生藻の供給源の一つであるとされているが、共生藻には生物特異性があると推測されている。試料から各々DNAを抽出し、現在網羅的に共生藻の生物情報を取得できるメタバーコーディング解析を実施中である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症拡大に伴うまん延防止措置、緊急事態宣言が沖縄、関東地方に発令された時期と有孔虫の無性生殖の時期が重なり、飼育に使用する個体が手に入らなかったため飼育実験を来年度に延期した。また、成熟した有孔虫個体を確保するために必要な十分なフィールド調査が、年度後半まで行えなかったため。
延期した、高温・強光条件下での共生微生物群集の変化を検証するための、無性生殖個体を用いた飼育実験を行う。今年度の予察的な実験により、実験機材の状態は確認済みである。また、今年度採取、実施した環境中のLBF成熟個体のメタバーコーディング解析を引き続き進めていく。十分なLBF成熟個体を必要とする酵素活性の実験についても、本年度実施予定である。
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Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers
巻: 183 ページ: 103718~103718
10.1016/j.dsr.2022.103718