研究課題/領域番号 |
21J01569
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森永 花菜 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / ファージ / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトの健康や疾患に関わる重要な難培養性腸内細菌の培養化を通じて、それらに感染する未知ファージを発見し、そのゲノム・形態・生理機能を詳らかにすると共に、宿主腸内細菌とファージの未知の相互作用を解明することを目指している。本研究によって、未知のファージが獲得でき、その遺伝学的・生物学的特徴や宿主との相互作用が明らかになれば、生物学・医学細菌学の基盤的知見の拡充と深化を促すだけでなく、腸内フローラの特異的な制御(ファージセラピー)によるヒトの健康維持・疾患予防に繋がる研究基盤の構築が見込まれる。 本年度は、ファージ分離に宿主として用いる腸内細菌ライブラリーを構築した。未知の腸内細菌を活きたまま獲得するため、糞便サンプル等を分離源とし、腸内細菌の単離・培養を行った。 また、嫌気性細菌におけるプラーク形成条件を検討した。絶対嫌気性細菌のプラークアッセイ方法を確立するため、無酸素条件下において、寒天培地中で、菌体を一様に増殖させる条件を検討した。多くの腸内細菌種において、寒天培地中で、細菌を一様に増殖させることに成功した。続いて、構築したプラーク形成技術と腸内細菌ライブラリーを用いて、新奇ファージの単離を試みた。 また、次年度に、ファージ-宿主腸内細菌間の相互作用機序を明らかとするための、嫌気性腸内細菌観察用デバイスの開発に着手した。多くの絶対嫌気性細菌において、ライブセルイメージングを行うことに成功した。これらの菌に感染するファージが単離された際には、嫌気性腸内細菌とファージのインタラクションの観察が可能になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス糞便より、腸内細菌を分離し、100種類以上の細菌種をストックすることに成功した。また、そのうち数菌株は分類学上の新規性が高く、新属と考えられる細菌であった。これらのストックの中から、ファージの宿主細菌として使用する細菌を選抜するため、新規性の高い細菌の生理・生化学的性状の解析を行った。 続いて、構築したプラーク形成技術と腸内細菌ライブラリーを用いて、新奇ファージの単離を行った。ファージの分離を複数回試みたが、プラークの形成は観察されなかった。 また、ファージ-宿主腸内細菌間の相互作用機序を明らかとするための、嫌気性腸内細菌観察用デバイスの開発に着手し、多くの絶対嫌気性細菌において、ライブセルイメージングを行うことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、腸内ファージの分離を目指す。ファージの分離源として、複数の系統のマウスの糞便を用い、宿主として選抜した多様な腸内細菌を用いることで、新奇腸内ファージを分離できることが期待される。 また、すでに保持している腸内細菌-ファージの組み合わせにおいて、昨年度構築した嫌気性腸内細菌観察用デバイスを用い、嫌気性腸内細菌とファージの相互作用を観察する。さらに、トランスクリプトームなどのバイオインフォマティクス技術を組み合わせて、ファージ-宿主腸内細菌間の相互作用機序の解明を目指す。
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