最終年度である3年目は,代表者の所属先変更に伴い,実験装置などの移管作業,研究環境の立ち上げ・整備を主な活動として行った.新たな研究施設において前所属先と同等以上の研究環境を構築することができた.
2年目から引き続き,水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を用いて,光触媒活性を汚染物質の質量減少から定量的に評価した.QCM上に二酸化チタン粉末を固定し,光触媒分解によるクエン酸の質量変化から,二酸化チタン粉末の大気および真空環境下での光触媒活性を評価した.昨年度の結果の再現性が確認できたため,これらのデータを基に,論文化し,報告した.さらに,3年目では,二酸化チタン以外の光触媒について同様な実験を行った.その結果,真空環境下にて,二酸化チタンの分解限界量を超える光触媒を開発することに成功した.本研究で使用したQCM法は大気・真空環境下において同じ手法で光触媒活性の評価することが可能である.また,大気環境下での光触媒のセルフクリーニング力を「直接」評価することができる.本研究で,開発したQCM法は宇宙応用だけでなく光触媒研究にも貢献できる..
アウトガス付着後の清浄化を目的とした光触媒の性能評価や開発のほかに,異なるアプローチとして,アウトガス低減材料の開発を進めた.そのひとつとして,竹を原料したセルロースナノファイバー(CNF)の製造条件とアウトガス特性との関係性を調べた.アウトガス特性は標準規格であるASTM E1559に基づき,アウトガスレートを評価した.CNFの純度が高まるにつれて,水以外の有機物のアウトガス放出が検出されなくなることが明らかとなった.これは,CNFがアウトガス低減材料として有望であることだけでなく,この製造プロセスがアウトガス成分の処理に効果的であることも示した.
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