本研究では、マイクロ流体デバイス(MFD)による分裂酵母の並列ライブイメージングと、そこからの選択的回収を基盤技術として、系の動的振舞いに基づくスクリーニング法の開発を、達成すべき技術的展開として位置付けた。 初期検討において、当初のデバイス設計や運用法では問題が生じることが分かり、新たに構想した捕捉原理・回収原理の検討を進めた。選択的回収技術については、複数検討していたうちの、光遺伝学を利用した方策について、実用化に向けた取り組みを本格化することができた。本研究課題の期間内に明確な科学的成果として結実させるには至らなかったものの、この回収戦略は、当初想定したよりも幅広い応用先へと展開できる手ごたえがあった。現在、独立の研究プロジェクトとして立案し、研究を進めている。 他方、ライブイメージングのケーススタディとして始めた、細胞周期制御の主要因子であるCDK(サイクリン依存性キナーゼ)の活性をライブイメージングする実験系が、新規バイオセンサーの開発という成果自体も含め、当初予想したよりも重要な生物学的知見を与えることがわかってきた。具体的には、分裂酵母がG2期からM期に移行するタイミングが、あるCDK活性の定量的な閾値によって制御されていることを明らかにした。本成果は最終的に、Developmental Cell誌に2024年1月付で公開された。本成果は、細胞周期の動的な制御原理を解明しようとする現在の国際的な研究潮流を鑑みると、それらの研究を加速する呼び水となることが予想された。そこで国内外の複数の学会において口頭発表するなど積極的に公開した。現在、複数研究室からの供与依頼があり、特にそのうちの一部は国際共同研究に発展し、現在論文執筆中である。また、海外研究機関でのセミナーにおける招待講演の依頼されるなど、本研究課題を通じて、国際的に競争力のある成果をだせたものと考えている。
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