研究課題
本年度には、まず石英チューブを用いた岩石分解手法の習得・過酸化水素を用いた試薬中のブランクの低下を試みた。その結果、非常に低いOsブランク(~0.1 pg)を実現した。また、白亜紀後期 Cenomanian~Coniacianの堆積岩をイタリアUmbria-Marche Basinとインド洋で掘削されたコアであるOcean Drilling Program (ODP) Site 762CからサンプリングしOs同位体比分析と白金族元素濃度の分析を行った。その結果、白亜紀中期Turonianのはじめ(94Ma)からConiacianのはじめ(~90Ma)にかけて、海水のOs同位体比(187Os/188Os)が0.6から0.4に単調に減少することが判明した。この変動はテチス海の堆積物・インド洋の堆積物の両方でみられていることから、全球的なトレンドを反映していると考えられる。この時期にはカリブ海台・マダガスカル海台の形成に関わる火山活動が発生していたことからこのOs同位体比の低下は、海台形成に関わる火山活動により、大量のマントル由来のOsが海洋に供給されたためだと結論付けた。また、この時代の堆積岩中には大量の3Heが含まれていることが報告されており、大量の宇宙起源物質の流入が示唆されている。しかし、白金族元素パターンには宇宙起源物質流入の証拠は確認されず、濃度もバックグラウンドの堆積物と変わらなかった。このことは、当時3Heを多く含んだ小さな宇宙塵の流入イベントはあったものの、これらの総量は白金族元素サイクルに変動を与えるほど大きくはなかったと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
白金族元素の分析は予想以上の進展を見せており、石英チューブを用いた岩石の分解の習得・ブランクの低下も期待以上であったため。
今年度に白金族元素・オスミウム同位体比の分析を完了させたため、今後は原稿の論文化・投稿を行う。また、ペルム紀・白亜紀前期の海水オスミウム同位体分析を開始する予定である。
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Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 613 ページ: -
10.1016/j.palaeo.2023.111414