研究課題
微細藻類は排水中の栄養塩を利用して医薬・食品・餌料等の原料を生産でき、循環型社会形成に向けた経済的インセンティブを創生できる。一方で排水に高濃度で含まれるアンモニアは高い毒性を持ち、そのままでは藻類は増殖できない。そこで本研究ではアンモニアを連続的に緩速供給する培養系において、供給速度を藻体活性に基づき制御することによりアンモニア毒性の回避を目指す。そのためにクロロフィル蛍光を用いてアンモニア毒性を特異的に検知する技術を開発する。初年度である2022年度は複数藻類種におけるクロロフィル誘導期現象の多変量解析による多種阻害の判別を実施した。加えて、次年度以降のクロロフィル蛍光モニタリングの実施に向けて、連続培養モニタリング装置の開発を実施した。多種阻害の判別は、緑藻Chlorella sorokiniana NIES-2173、ハプト藻Isochrysis galbana UPMC-A009、およびシアノバクテリア Arthrospira platensis NIES-39の3種を用いた。アンモニア濃度を5条件、Cu濃度5条件設け、暴露後は温度25°C、光量子束密度150 μmol photons m-2 s-1で培養した。各種蛍光パラメーター、光学密度、pHを0、1、2、5、24時間に測定し、光順応とアンモニア阻害の関係性を解析した。その結果、C. sorokiniana、I. galbana、A. platensisそれぞれにおいて、高い精度で対照区をアンモニア添加区と区別することができ、本手法の有用性を実証できた。一方、3種を合わせて解析した際には、判別率は低下し、さらに主成分軸においてNH3毒性は3種で異なる方向を示した。今後、藻類分類群による変化を考慮した判別の必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画では阻害物質だけでなく、光・温度条件も変化をもたせた多様な条件での比較を目指していたが、実験環境整備の都合上、実施できなかった。一方で、次年度以降の実験に必要な連続培養モニタリング装置の開発に着手できたことで、一部前倒しでの実施ができた。
次年度は開発中のモニタリングシステムの完成と、多種阻害・多種藻類に適応可能な阻害判別法の探索を継続する。手法の探索において、クロロフィル蛍光単独での判別が難しい場合は、他の計測項目との組み合わせも検討する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Algal Research
巻: 71 ページ: -
10.1016/j.algal.2023.103053
Biocatalysis and Agricultural Biotechnology
巻: 47 ページ: -
10.1016/j.bcab.2022.102562
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