研究課題
一般的に高齢者では、健康成人と比較して、加齢に伴って免疫システムが個体レベルで変化しうることが知られており、「免疫老化」という言葉で表現されている。免疫老化現象について、すべての免疫担当細胞が加齢により変化しうることが示唆されているが、特にT細胞の変化が顕著であることが報告されている。以上の背景を踏まえて、本研究では、加齢に伴う免疫老化現象を、特に組織中のT細胞の機能変化に着目して分子レベルで解析し、その実態を個体レベルで解明することで、年齢に応じた高齢者用新規感染症ワクチン開発や免疫療法の開発に繋げる研究基盤を構築することを目的とする。今年度はこれまでの報告により免疫老化現象との関連が強く示唆されるNaive T細胞に関して、加齢に伴う質的変化の解析を行った。具体的には、まず組織由来のNaive T細胞を特異的に分取するマルチフローサイトパネルを構築した。このパネルを用いて、若齢および高齢のサル13頭から得られた脾臓検体から、Naive CD4 T細胞およびNaive CD8 T細胞をソーティングし、TCR依存的刺激を加えたのちに細胞を培養後にRNAを精製した。コントロール群として、未刺激群を設定した。得られたRNAからcDNAライブラリーを作製し、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行なった。その結果、高齢サルでは若齢サルと比較して、TCR依存的刺激による遺伝子の発現変動が低いことが明らかとなった。現在、トランスクリプトームデータの詳細な解析を行い、刺激不応答に関連する因子の同定を行なっている。今後はNaive T細胞の上流である造血幹細胞に関しての解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた、若齢、高齢サル由来の組織検体について、Naive T細胞を単離し、次世代シーケンスによる解析を行い、計画通り進展している。
今年度得られたトランスクリプトームのデータに関して詳細に解析し、加齢によるNaive T細胞の刺激不応答に関連する因子の同定を行う。
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Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: 1081047
10.3389/fimmu.2022.1081047