研究課題
本年度はNaive T細胞の上流である造血幹細胞に関して解析を行った。具体的には、若齢サル5頭、高齢サル6頭の骨髄液から得られた全ての細胞についてsingle-cell RNA-seq (scRNA-seq)解析を行った。まずそれぞれの検体の特徴を掴むために主成分分析 (PCA)を行ったところ、若齢サルはそれぞれ類似した特徴を示したが、高齢サル同士は主成分析上の距離が遠いことが明らかとなった。つまり骨髄細胞は加齢に伴い、多様化することが示唆される。また造血幹細胞のマーカーであるCD34を指標にして各細胞をクラスター分けしたところ、高齢サルでひとつのクラスターが増加していた。このクラスターに特徴的な遺伝子に関して、Gene Enrichment解析を行ったところ、p53パスウェイ、DNAダメージ、アポトーシスに関わる遺伝子が高齢サルに特徴的なクラスターで高発現していることを明らかにした。以上の結果から、造血幹細胞は加齢に伴いp53パスウェイやDNAダメージが更新し、その分化後のNaive T細胞に影響を与えている可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、カニクイザル検体由来の造血幹細胞についてSingle-cell RNA-seqを行い、データ解析まで完了した。
高齢サルの造血幹細胞で見られた特徴が、その下流のNaive T細胞に継承されているか検証する。
2年度分の学術条件整備分(直接経費:200万円、間接経費:60万円)が令和5年度に一括で交付されたため、次年度使用額が発生した。なお、研究代表者は令和6年4月30日に特別研究員PD(雇用PD)を辞退し、貴会の承認を得ている。令和6年度は引き続き当課題を実施するが、令和6年4月使用分を除いた学術条件整備分の未使用額は返還手続中である。
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Communications Medicine
巻: 4 ページ: 26;4(1):30
10.1038/s43856-024-00448-4