研究課題
本申請では、急性骨髄性白血病(AML)においてアミノ酸マスター因子である転写因子ATF4がアミノ酸合成系の活性化の両方を促進することで病態発症・進展に寄与するかを明らかにすることを目的とし、研究を開始した。ヒト白血病細胞株(K562、MOLM13、TF-1)およびマウス白血病細胞株(RN2、BaF/3)にCas9を発現させた細胞に対して、sgATF4発現ベクターを導入し、ATF4欠失細胞が野生型細胞との競合的培養条件において経時的に減少することを明らかにした。ATF4欠失細胞は、G1/S遷移の遅延/停止を伴う低下を示した。近年、ATF4は正常造血にも寄与し、造血幹細胞の機能維持を担うことが報告されており(Sun et al., Science Advances 2021)、急性骨髄性白血病の治療標的としてはATF4の下流を探索することが不可欠だと考えた。そこで、白血病細胞株を用いたCRISPRスクリーニングの報告をもとに(Shi et al., Science Advances 2021)、白血病の生存・増殖に重要なはたらきを示すATF4の標的遺伝子を探索した。複数の候補遺伝子のsgRNA発現ベクターを作成し、それぞれ白血病細胞株に導入した。その結果、特に分岐鎖アミノ酸トランスポーターSLC7A5および葉酸合成酵素MTHFD1に対するsgRNAを導入した白血病細胞が競合的培養条件で減少することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
AML細胞株におけるATF4の役割とその下流で重要な役割を果たす因子について探索・同定を行うことができた。
マウス個体を用いた白血病モデルでのSLC7A5およびMTFHD1の役割を解析するとともに、RNA-seq解析やメタボローム解析により作用機序について明らかにしたい。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Nature Genetics
巻: 53 ページ: 707-718
10.1038/s41588-021-00828-9