ファイナンス理論の方法を金融実務に応用する際に、重要な計算対象のうちの一つとしてグリークスと呼ばれる金融資産・商品の価格の感応度を表す量がある。これを計算する際に、数学的には期待値の勾配の計算が必要となる。この勾配計算は応用数学やデータサイエンスなど様々な分野において重要な事柄である。しかしながら、期待値の中に現れる多次元拡散過程の分布が未知である、ペイオフ関数が滑らかでないなどといった理由で直接計算することが困難である場合が多い。このような問題に対して、期待値の、拡散過程の初期値に関する勾配をペイオフ関数の微分を用いずに表現する「Bismut's formula」と「Gaussian Kusuoka Approximation」を用いることで前述の問題を解消し、実践的なモデルに適用が可能であるような新しい自動微分の計算法を構成し、国外学会にて発表した。またその拡張として、拡散過程の初期値に限らずあるパラメータに関する勾配に対しても計算法の拡張を行い、同様に国外学会にて発表した。
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