• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

災害コミュニティのボトムアップ理論の構築

研究課題

研究課題/領域番号 19J00055
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

大門 大朗  京都大学, 京都大学防災研究所, 特別研究員(CPD)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2024-03-31
キーワード災害ボランティア / 復興 / 防災 / 贈与論 / 社会心理 / グループ・ダイナミックス
研究実績の概要

採用2年目である本年は、研究1・2の総括を行うとともに、海外の事例研究である3を進展させた。コロナ禍によるフィールドワークやそれに伴う対面での調査活動に大きな支障がでたことで、対面を必要としない量的・理論的な研究も合わせて行った。
◯研究1・2の進捗
採用2年目の本年は、災害対応期と防災期の架橋を目指した災害前/後(研究1・2)のコミュニティでの実践を進めた。コロナ禍での移動制限がかかったことを踏まえ、本年は、岩手県野田村に軸足を置くこととし、長期滞在研究(2020年2月~12月)を行った。以上より、5つの成果が得られた。第一に、岩手県野田村と連携し、災害復興から平時のまちづくりへの活動について、同村役場および地域住民とのアクションリサーチを行った。第二に、東日本大震災から10年目を迎える同村において、現地でのボランティア組織の活動について整理を行い、10年間の取り組みについて書籍としてまとめた。第四に、被災した地域において、何気ない日常の回帰とと災害の風化の側面を相互に把握するため、震災前後の岩手日報の分析を行った。第五に、高知県黒潮町において、防災・減災から災害後の社会を見据えた地域実践(防災授業)を岩手県野田村との連携の中で行った。
◯研究3の概要
本年は、草の根的な人々の復興への寄与・新たな組織の出現と災害サイクルへ影響についての国際比較を文献調査・インタビューを通じ明らかにすることとしていた。だが、米国での対面活動ができないことから、文献研究を大きく2つ行った。第一に、防災意識と行動の関係について論じた論文について2010年から発刊された国内文献のレビューを行い、米国での論文の違いを比較した。第二に、ソーシャル・キャピタルに関する理論的な研究と、近年の災害研究について、国際的な事例研究を行いながら、米国の事例について整理を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究は、おおむね順調に進展していると言える。本年度は、採用2年目として、コロナ感染症の影響を勘案し、岩手県野田村・東日本大震災被災地に移住しての10ヶ月に渡るフィールドワークの展開、「集合的トラウマ」に関する新たな研究テーマの深化、アメリカ・デラウェア大学災害研究センターにおける客員研究として研究を開始することができている。フィールドワークを中心とする手法もあり、コロナ禍での研究が充分進まない中であったが、テキストマイニングやWebインタビューなどの手法や文献研究など対面式ではない、別の手法を取り入れ研究を進めた。査読論文は国内誌4報(うち筆頭2報)、国際誌1報、分担執筆として書籍1報など本研究の成果も徐々に外部に発信している。加えて、被災地での実践活動においても、新聞などのメディアや屋台を用いた発信など、成果やその発信、実践ともに積極的な研究活動を行ったといえる。以上より、本年度の研究は、期待通り研究が進展したと言える。

今後の研究の推進方策

本研究は、「被災者対支援者」という非対称な関係が強調されがちなトップダウン型・フォーマルな領域(行政組織・災害団体など)に対し、災害時に草の根的に現われる人々の力の分析を通じ、災害時におけるボトムアップ理論を構築することを目的とし、研究を行う。その具体例として、災害時に自然発生的に立ち上がる人々や組織化の分析を中心とし、国内外における災害前・後の中長期にわたる過程に着目した以下の研究を行う。災害前/後の国内の事例研究である研究1・2、海外の事例研究である研究3、シミュレーションを行う研究4、各研究を総合し理論化する研究5に分かれる。3年目以降の研究については、研究1・2の成果を論文として発信するとともに、研究3を中心としながら、研究4の準備研究を行う。具体的には、以下の通りである。
◯研究3:海外の事例研究
ニューオーリンズ(ハリケーン・カトリーナ)、四川省(四川地震)の被災地をフィールドとし、現在も活動しているNGO・NPOを中心とした文献調査を行う。特に、被災地内で立ち上がった組織について、米国デラウェア大学災害研究センターの資料を用い事例研究を行う。
◯研究4:シミュレーション
復興過程で生成・消滅した人々と新たな組織の関係とその要因を明らかにするために、多様な支援が見られた文化の違う3つ被災地(東日本大震災、ハリケーン・カトリーナ、四川地震)に着目し、組織の生起・消滅と人々のネットワークをモデル化し、そのモデルから草の根的な人々のダイナミックスについてエージェント・ベースド・モデルを用いてシミュレーションし、構造を明らかにする。本年は、質的な文献調査の結果を量的に解釈しシミュレーションのための基礎的なモデル作成を行う予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 実践としてのチームエスノグラフィ:2016年熊本地震のフィールドワークをもとに2021

    • 著者名/発表者名
      宮前良平・置塩ひかる・王文潔・佐々木美和・大門大朗・稲場圭信・渥美公秀
    • 雑誌名

      質的心理学研究

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 集合的トラウマと災害復興に関する理論的検討:カイ・エリクソン『Everything in its Path』を読み返す2020

    • 著者名/発表者名
      大門大朗・宮前良平・高原耕平
    • 雑誌名

      日本災害復興学会論文集

      巻: 16 ページ: 37-46

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Constructing a positive circuit of debt among survivors: an action research study of disaster volunteerism in Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Daimon H.、Atsumi T.
    • 雑誌名

      Natural Hazards

      巻: 105 ページ: 461~480

    • DOI

      10.1007/s11069-020-04319-8

    • 査読あり
  • [学会発表] 「疑似被災」が防災にもたらす社会的意味:被災地と未災地における「防災」記事のテキストマイニングから2020

    • 著者名/発表者名
      大門大朗
    • 学会等名
      日本災害復興学会 2020年度遠隔大会
  • [学会発表] Natural hazards in Japan: A systematic review of perceptions, intentions, and behaviors2020

    • 著者名/発表者名
      Daimon, H.
    • 学会等名
      IDRiM Virtual Workshop for Interactive Discussions between Senior and Early-Career Scientists
    • 国際学会
  • [図書] 東日本大震災と災害ボランティア2021

    • 著者名/発表者名
      渥美公秀、貫牛利一、石塚裕子、李永俊、河村信治、大門大朗、寺本弘伸、外舘真知子、永田素彦、宮前良平
    • 総ページ数
      318
    • 出版者
      大阪大学出版会
    • ISBN
      4872596439

URL: 

公開日: 2021-12-27   更新日: 2023-08-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi