研究実績の概要 |
本研究は、外国につながる子どもを含めた日本の教育現場において、母語教育と外国語教育の連携も視野に入れ、どのような言語横断的な言語教育のカリキュラムや授業づくりのあり方を提示できるかを主な問いとしている。特に英国の言語意識運動に注目し、言語教育がどのように言語運用能力の側面と、他言語への寛容性を育成しうるのかを研究課題としている。 今年度は、去年度調査した言語意識運動の第一人者であるホーキンズ(Hawkins, E.)のカリキュラム論をまとめると同時に(『教育学研究』)、別の潮流に位置づけられる人物であるティンケル(Tinkel, A.)の言語教育論を検討した。複数の言語をカリキュラム内に含める言語教育論ではなく、英語という単一言語のみを扱うティンケルの論においても、個々人が身近な言語使用に対して探究を行うことが促されることで、言語への偏見を打破しようとする試みが見られた(『京都大学大学院教育学研究科紀要』)。 加えて、ホーキンズに対して批判した批判的言語意識論者の系譜に位置づくウォレス(Wallace, C.)の言語教育論を検討した。これら二者の言語教育論を検討する作業を通して、ホーキンズの論の相対化を図った。ウォレスは共通のテクストとしての「高収穫なテクスト(high yield text)」と授業内の問い(「管理的(managerial)」「実質的(substantive)」「探索的(exploratory)」な問い)の工夫を通して、教室内に多様性と共通性の両方を担保しようとしていたことを明らかにした(『教育方法学研究』)。
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