本研究課題では運動関連脳領域の活動パタンから同定される感覚運動ネットワークを標的とした神経機能修飾技術の概念実証を目的として、健常者を対象とした運動成績と脳の律動的活動の関連について領域間の相互作用の関連から解析を実施し、最終年度には神経原性の運動疾患の患者を対象として開発したニューロフィードバックシステムに関するパイロット試験を実施した。2024年度までに得られた健常者を対象とした介入実験の知見を踏まえ、ニューロフィードバック訓練中の頭皮脳波信号から被験者に固有のターゲット周波数、ターゲット電極を同定するアルゴリズムを新規に実装し、これを用いて脳卒中片麻痺患者に対する単回のパイロット試験を実施した。この実験を通じて3疾患、合計12名の患者から疾患横断的なデータを取得することができた。さらに単回の介入によって不随意な筋収縮に関する抑制効果を見出すことに成功するなど、単群の限定的な観察ではあるものの良好な効果を確認した。さらにこうした運動野近傍から取得した頭皮脳波の振幅スペクトルにおける10 Hz近傍の個人周波数の信号強度が増強しており、律動的な脳の活動の変化と介入の関連が示唆された。今後はより被験者の取り込み基準を統制し、実験デザインを対照群を設けた二重盲検デザインで今回の知見の再現性を確認することで、今回の知見から脳状態の随意的な調節と運動機能の変化に関するより詳細な検討を実現する。本研究課題では一連の研究を通じて、(1) 健常者での運動関連ネットワークのリアルタイムモニタリング・フィードバック技術の開発 (2)開発した半球間の機能的結合性の実時間調節を用いた両手運動協調課題の課題成績の修飾(3)感覚運動活動の単回介入による操作がもたらす運動機能変化の評価を通じて運動機能と神経活動パタンの関係を検証をおこない、一定の理解をもたらした。
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