研究課題
本研究は,生体膜リン脂質を土台として機能する膜タンパク質に注目し,土台である膜リン脂質の(どのような)変化がタンパク質の活性に(どのように)影響するのかを検証することを目的とする。特に,感覚受容経路における脂質-タンパク質相互作用に注目する。2022年度は,2021年度に見出した“DRG神経特異的なLPCAT3欠損マウスでは神経障害性疼痛が抑制傾向である”という知見に関して,さらに解析を進めた。アラキドン酸含有リン脂質合成酵素LPCAT3のサテライトグリア特異的欠損マウス,およびマクロファージ特異的欠損マウスをそれぞれ作製し,神経障害性疼痛の解析を行ったところ,マクロファージ特異的欠損マウスではコントロールマウスと同程度の疼痛症状を示したのに対し,サテライトグリア特異的欠損マウスは疼痛抑制傾向を示した。さらに,DRG神経特異的欠損マウス,サテライトグリア特異的欠損マウスの後根神経節組織を採取し,リン脂質解析を実施した。DRG神経特異的欠損マウスでは,アラキドン酸含有リン脂質が著明に減少し,神経損傷による増加も抑制されていた。サテライトグリア特異的欠損マウスでは,正常時でのアラキドン酸含有リン脂質量に変化は認められないが,神経損傷後の増加は抑制傾向が認められた。また,炎症性疼痛モデルでは後根神経節におけるアラキドン酸含有リン脂質の増加は起こらず,さらに,上記の両マウスにおいて疼痛解析を実施したが顕著な抑制傾向は認められなかった。今後は,より詳細なメカニズムの解析が必要である。また,昨年度に見出した他の神経系細胞におけるリン脂質リモデリングの意義についても解析を進めたい。
2: おおむね順調に進展している
2021年度に見出したLPCAT3-DRG neuron特異的欠損マウスでは神経障害性疼痛が抑制するという知見をより深めることができたため。
2022年度までに得られた疼痛に関わる知見について,より詳細なメカニズムについて検討を進める。さらに,グリア細胞における脂質リモデリングの意義についても解析を進める。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 449 ページ: 116112~116112
10.1016/j.taap.2022.116112
Frontiers in Pain Research
巻: 3 ページ: 3:948689
10.3389/fpain.2022.948689