研究課題/領域番号 |
22KK0017
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 満 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50279303)
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研究分担者 |
阿部 和美 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 講師 (00822230)
宮澤 尚里 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 主任研究員 (80625476)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 伝統社会 / 資源管理 / 持続性 / インドネシア / 東ティモール / パプア州 / ドウィジェンドラ大学 / スバック |
研究実績の概要 |
2023年度は第1に、インドネシア側共同研究者を日本側に招聘することで、国際ワークショップおよび国際シンポジウムを開催し、広く本共同研究プロジェクトの意義を学内外に伝えることであった。次に、研究代表者、各研究分担者が東ティモール、インドネシア、パプアへのフィールド調査を実施した。 第1のインドネシア側の招聘者として、7月22日に長くインドネシアに在住し現地で自然野菜農園を起業し、バンドン工科大学生などに有機栽培のあり方や意義を伝授している西村昭氏を招聘し、「資源管理のための伝統的制度の役割と持続可能性との関係」をテーマに学内外からの参加者を迎えて国際ワークショップを開催した。また、同氏の滞在中にはジャワ中央部を襲った地震後のコミュニティ参加の再建のあり方に向けた講演も別途実施した。次に、2024年1月には、ドウィジェンドラ(Dwijendra University)学長のジェデ・スダナ(Gede Sudana)氏とインドネシア文化遺産委員会代表のカトリニ・パラティハリ・クボンツブ(Catrini Paratihari Kubontubuh)氏をインドネシア・バリから招聘し、本学部のSDGグローバルアジア最終総括シンポジウム「Global Asia Research Center Symposium」(1月27日)において、研究代表者がモデレーターした第2分科会での報告、さらに本科研も共同主催となって開催され国際たシンポジウム「Comunity Susutainability and Resilience in the Post-Pandemic World」(1月30日および31日)でもパネリストとして講演を依頼した。なお、本国際シンポジウムも学内外に広報し、インドネシア大使ら関係者も参加し、バリにおける伝統的なスバックが社会安定要因になっていることを理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初共同研究先の1つとして考えていたインドネシア国立ウダヤナ大学スバックセンターが、学内的不祥事が発覚し、同大学での教鞭をとっていた、現在ドウィジェンドラ(Dwijendra University)学長のジェデ・スダナ(Gede Sudana)氏を中心に本共同研究プロジェクトの立て直しをすることになった。ただ、今後のウダヤナ大学のガバナンスの安定が回復された時点で研究交流の可能性は復帰したいと考えている。上述の通り、ドウィンジェンドラ大学との共同研究は確実に進展しており、2023年度の研究実施計画に基づき、3名のインドネシからの実務者および研究者の招聘で、「伝統的コミュニティが、政治・社会・経済システムの変化に対し、どのように対応し、伝統的資源管理制度、効果的に機能するのか」という「メカニズム」に関する検証は大きく進んだと言える。 本共同研究のパートナーはインドネシア・バリ在住の大学であるが、他方でバリ以外でも伝統的メカニズムがコミュニティの政治社会の安定へ果たす役割は大きいと考える。今回もインドネシア・パプア州、及びティモール島東側の東ティモール民主共和国の調査を実施した。また研究協力者の同行を踏まえてより深い調査が可能になったと考える。これらの調査、さらには上述した「研究実績の概要」の国際ワークショップおよび国際シンポジウムから得られた知見は確実に本共同研究の成果として得られている。 なお、国際共同研究の研究成果の発信に関しては、シンポジウムでの報告はできたものの、今回は代表者、分担者の個別の発表が主となった点で、次年度はぜひ共同研究に参加する実務者の参加の可能性も含めて発信を考えてみたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、第1に現地インドネシア・バリでの共同研究発表を実施したい。日本側研究代表者、分担者のほかに研究協力者として、伝統的社会を維持する上での政治・社会・経済システムのあり方、また伝統的社会を維持するコミュニティ自身の運営やネットワークなどのあり方、何よりも世界的な観光地としてのバリのツーリズムの方向性、ツーリズムに関する地元社会の捉え方なども議論したい。さらに、現在議論になっているオーバーツーリズムの問題、気候変動を背景にした防災・減災も今後地域社会の重要な課題になっている。その観点から、ぜひ研究協力者の参加も促して、さまざまな観点から本共同研究の多面的な意義を深めたい。すでに、ドウィジェンドラ(Dwijendra University)学長のジェデ・スダナ(Gede Sudana)氏とは意見交換を実施ており、現地バリでの相互研究報告(国際ワークショップおよび国際シンポジウム)の段取りはできている。あとは、報告会の時期や参加者などの具体的な設定を協議している。 次に、共同研究成果の発表を印刷物か、ウェブサイトで実施したい。研究代表者が所属する先端社会科学研究所からはすでにワーキング・ペーパーおよびウェブサイトへの掲載が可能であり、ぜひこれらのウェブでの媒体を通じて研究成果の発信を実施したい。すでに以前の科研研究時には研究成果として発信の実績があり、まずは、2023年度実施の国際ワークショップと国際シンポジウムの成果内容を早急に発信することを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の宮澤尚里氏が当初、研究成果を発表する上で、広くアンケート(量的)調査の実施を考えていたが、その範囲なや業務担当者等の選定が間に合わず、次年度への実施に切り替えたことが繰越の主な要因となっている。また、当初インドネシア側からインドネシア国立ウダヤナ大学スバック研究センターからの招聘研究者を予定していたが、同大学の都合で招聘研究者が実現できなかったことも他要因として挙げられる。
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