研究課題/領域番号 |
22KK0021
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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研究分担者 |
乾 友彦 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10328669)
金 榮愨 専修大学, 経済学部, 教授 (50583811)
外木 好美 立正大学, 経済学部, 准教授 (10621964)
枝村 一磨 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (20599930)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 生産性 / 無形資産 / トービンのQ |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、2022年10月に始まったため、実質半年間の研究成果ということになる。2022年10月にはマンチェスターで開かれた第7回World KLEMS Conferenceに出席し、立正大学の石川氏との共同研究であるDeclining Capital Formation and the Role of Intangiblesを報告した。この研究は、今回の共同研究の理論的な基礎である、複数資産によるトービンのQ理論を用いた分析である。 本研究の中心であるBounfour Paris-Saclay大学教授とは、本プロジェクトが受諾された直後の2022年11月に来日してもらい、学習院大学で小さなワークショップを開催した。そこでは、東アジア諸国(日本、韓国、中国)のデータの整備状況と、これに対応して欧米のデータをどのように整備するかが話し合われた。 欧米のデータは、Orbisデータベースを使用するが、これを保有している学習院大学での利用を可能とするために共同研究者である枝村氏(神奈川大学)と立正大学の石川氏に学習院大学経済経営研究所の客員研究員に就任してもらい、Orbisデータの精査を依頼した。その結果については、2023年3月に宮川と枝村がパリへ行き、Paris-Saclay大学でBounfour教授とその共同研究者に説明をしている。その際に、今回のプロジェクトの理論的基礎であるMiyagawa, Tonogi and Ishikawa (2021, JJIE)の概要を説明するとともに、Bounfour教授が要望していた財務データの中でIT資産をどう認識するかについても討議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに述べたように2022年度は、複数の資本財を擁する投資理論をベースとして、国際共同研究を実施するために必要な東アジア(日本、韓国、中国)の上場企業データと欧米の上場企業データを調べ、整合的な分析が可能かどうかをチェックすることであった。このため2022年11月には東京で、2023年3月にはパリで共同研究者であるBounfour University of Paris-Saclay教授を交えながら、データを中心とした2回のワークショップを行ってきた。我々の研究は複数の資本財データを必要とするが、この2回のワークショップによって東アジア諸国と欧米企業の資本財分類を合わせることができた。 このワークショップを通して確認された各国共通の資本財分類は、構築物、機械、研究開発だが、Bounfour教授はこれに加えてICT資産を区分できないかとの要望を出している。従来の資本財からICT資産を取り出す方法は、宮川が日本や欧米の産業別生産性データベース(JIPデータベースやEUKLEMSデータベース)を使って取り出す方向で合意している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように、2022年度に東京とパリでデータに関するワークショップを行ったことで、東アジアの上場企業のデータと欧米の上場企業のデータの共通点と相違点については共通の認識ができた。2023年度前半は、まず東アジア諸国の企業レベルの生産性に関する研究から各企業の資本ストックを取り出すことを行う。すでに乾氏と金氏は、日本、韓国、中国の上場企業については、生産性を計測するための資本ストックの計測を済ませており、後はこれを複数の資本財に分ける作業と、各企業の企業価値を測る作業が残っているだけである。また欧米企業についても、2023年3月にパリで合意した内容に基づいて、推計に必要なデータ整備を行う。Bounfour教授とは、こうした国際的なデータ整備の成果を2023年7月にオンラインの会議で報告するということで合意している。 この合意に基づいて、2023年9月からは宮川がパリへ行き、Bounfour教授及びその共同研究者と欧米データを中心に最初の推計作業を行い、2023年度末には一定の成果を出すことを見込んでいる。 日本を始めとする東アジア諸国については、日本の共同研究者間で2023年度後半に推計を行い、一定の成果を出す予定である。2023年度末にはこれらの成果を持ち寄ってどのように論文にまとめるかを議論した上で、2024年度に実際に論文作成作業にとりかかる予定である。論文作成には約半年かかると考えられるが、完成後2024年度後半から25年度前半までは海外や国内の学会で報告を行い、その後査読雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に関する推計対象会計項目の確認のため3月にパリへ渡航した際の旅費は、時期の選定および日程を工夫したため、予算を抑えることができた。また、データ整理作業のためのPC購入を予定していたが、Orbis dataのダウンロードの許可を学習院大学法経図書センターから得る作業に時間を要したこと、フランスチームとの詳細な打ち合わせの結果、資本をICT資本と非ICT資本に分割する必要やOrbis dataから減価償却累計が取得できるかどうかに時間を要した。こうした課題の解決策をフランスチームと共有できたのは2023年の3月半ばであった。このため上場企業に関するミクロデータを用いた推計作業等の開始時期が2023年度前半にずれ込み、物品費によるパソコンの購入時期を2023年度に変更した。 2023年度には、東アジア諸国の企業レベルの生産性に関する研究から各企業の資本ストックを取り出すことを行うため、専門的な知識を有した博士後期課程学生による推計作業を推進させるため、謝金の支出を計画している。
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