研究課題/領域番号 |
22KK0038
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮本 光貴 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (80379693)
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研究分担者 |
大宅 諒 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (10804750)
浜地 志憲 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (60761070)
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00711574)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ対向材料 / 水素 / ヘリウム / 微細組織 / ガス保持特性 / STEM-EELS |
研究実績の概要 |
本研究では,米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の直線型プラズマ発生装置PISCESを用いて,核融合炉環境を模擬して高密度プラズマ照射した材料の表面特性変化のその場計測を実現し,さらに我が国の世界最高水準の分析機器を用いて,材料中の水素同位体・ヘリウム挙動を高精度に評価することを目的としている. 当初計画では,令和4年度中に新たにオージェ電子分光装置を日本国内に導入し,令和5年度に島根大学に既設の分光エリプソメトリーとあわせてUCSDへ搬送することを予定していたが,予算配分額の減額や,分析機器価格の高騰があり,計画を大幅に見直した. 新たな計画として,令和5年度に,他の経費との合算により,その場測定に適したin-situ用高速分光エリプソメーターを新たに導入し,UCSDに納品した. また,日本国内の分析装置を用いた基礎的なデータの収集にも着手しており,主にヘリウム照射したタングステンにおける重水素保持挙動を,高分解能質量分析計を導入したイオン照射装置直結型の透過型電子顕微鏡(島根大学)とモノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡(京都大学)を相補的に用いて詳細に調べ,保持された重水素の大部分がヘリウムバブル中に存在し,ヘリウムバブルが水素同位体保持量を著しく増加させ,顕著な捕捉サイトとして機能していることを定量的に示した.さらに,バブル内に捕捉された水素同位体が,バブル内でほぼ均一に存在していること,ヘリウムの捕捉を抑制していることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,当初計画からは大幅な見直しがあったが,UCSDにin-situ用高速分光エリプソメーターを新たに導入し,高密度プラズマ照射下でのその場測定の準備と基礎データの収集を進めることができている.また,2種類の高機能電子顕微鏡(島根大学,京都大学)を用いた実験では,これまでの継続的な取り組みにより,タングステン中の水素同位体やヘリウムの挙動について,理解が大幅に進んでいる. 得られた成果をすでに国内外の学会,学術論文で報告したほか,令和6年度6月に開催予定の第15回核融合エネルギー連合講演会等でも報告する予定である. 全体としてはおおむね順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
UCSDにおいては,主に日本国内の若手研究協力者(大学院生を含む)が米国に渡航し,米国の共同研究者とともに実験を行う予定である.令和5年度中に新たに導入したin-situ用高速分光エリプソメーターをPISCES装置へ据付するためのフランジの設計と製作を行い,プラズマ照射下での材料の表面変質をその場計測できるシステムの構築を予定している. さらに,日本国内の分析装置を用いた基礎的なデータの収集を引き続き実施する. また,核融合炉下でプラズマ対向材料表面に形成する不純物堆積層の影響を調べるために,RFプラズマスパッタ装置(九州大学)を用いてタングステン堆積層を作成し,堆積層の高密度プラズマ照射実験をあわせて行う予定である. なお,研究成果の発信においては,国内外における学会,研究会において積極的に成果報告を行うとともに,広く認められた学術雑誌に多数の論文を寄稿するように努める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は,分光エリプソメーターを購入し,米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の高密度プラズマ発生装置PISCESに導入を進めたが,急激な円安や半導体不足などのあおりで,当初予定していた価格での機器購入ができなかった.他予算との合算により必要な機器の購入はできたが,予定していた国内外の研究,成果発表のための出張旅費,および実験を進めるための消耗品費が大幅に不足したため,必要最低限の研究活動を継続するために,次年度使用額が生じた. 令和6年度以降も,米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の高密度プラズマ発生装置PISCESを用いた研究や九州大学のRFプラズマスパッタ装置によるタングステン堆積層に関する研究を継続する予定であるが,可能な限りの旅費の削減や,別途自己予算を充当することで,研究活動を継続できる見通しが立っている.
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