研究課題
本研究は、宇宙線中に微量に含まれる反粒子(とりわけ未発見の反重陽子)の高感度探索を通じてダークマター等の初期宇宙物理の課題に迫ることを最終目的とする。ダークマターの解明は現代の宇宙物理学・素粒子物理学における喫緊の重要課題の一つである。ダークマターの解明には多角的な研究が求められており、本研究では宇宙線反重陽子という新しい手掛かりを開拓することで他実験とは異なる視点からダークマターの正体に迫る重要な知見を提供できる。その学術目的に迫るため、反粒子宇宙線観測計画GAPS(General Anti-Particle Spectrometer)を推進している。GAPSの測定器は、シリコン検出器群とプラスティックシンチレーションカウンタ群で構成され、エキゾチック原子の崩壊過程を利用した新しい粒子識別手法を導入する。この新手法により、測定器の大型化を実現する。NASA南極周回気球によって1ヶ月間規模の長時間観測を高空にて複数回実施し、稀少な反粒子を探索する。GAPSは従来に無い新しいコンセプトに基づく測定器であることから、気球実験に先立ち、地上(実験室内)や環境試験設備(真空チャンバ)での動作確認が欠かせない。2022年度は、米国カリフォルニア大学バークレー校にてGAPS測定器の総合組立および総合試験(シリコン検出器群の冷却を含む)を実施し、測定器各構成要素の基本性能を確認した。また、真空チャンバ環境試験の2023年度の実施に向け、準備を推し進めた。
3: やや遅れている
本研究で開発するGAPS測定器の真空チェンバ環境試験は米国の研究協力者と共同で米国にて実施する必要があり2022年度中に予定していたが、当初の想定に反し米国での試験設備の運転計画に変更が生じることが判明したことから、測定器真空チャンバ環境試験の実施を2023年度に延期し、当該試験に掛かる器材調達費や米国出張旅費などを2023年度に繰り越した。ただし、それに伴い、米国での総合試験には十分な時間を充てることができるようになったことから、GAPSの測定器開発および科学観測実現という本研究計画の最終目標には影響していないと考える。
GAPS測定器の真空チャンバ環境試験を米国カリフォルニア州にて実施し、南極気球飛翔と同様の低温低圧環境下で測定器が所期の動作をすることを確認する。続いて測定器一式をニューヨーク州コロンビア大学ニーブス研究所に輸送し、測定器の総合試験を重ねる。これにより、南極気球実験の準備を整える。その後、NASAが南極マクマードにて運用する南極周回長時間気球フライトによる科学観測を実施し、数値シミュレーションも交えて取得したデータの解析を進める計画である。
本研究で開発するGAPS測定器の真空チェンバ環境試験は米国の研究協力者と共同で米国にて実施する必要があり2022年度中に予定していたが、当初の想定に反し米国での試験設備の運転計画に変更が生じることが判明したことから、測定器真空チェンバ環境試験の実施を2023年度に延期し、当該試験に掛かる器材調達費・搬送費や米国出張費を2023年度に繰り越した。2023年8月までに米国カリフォルニア州にて測定器真空チャンバ環境試験を実施する計画である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1049 ページ: 168102_1~9
10.1016/j.nima.2023.168102
Astroparticle Physics
巻: 145 ページ: 102791_1~10
10.1016/j.astropartphys.2022.102791
https://gaps.isas.jaxa.jp/