研究課題
本研究は、宇宙線中に微量に含まれる反粒子(とりわけ未発見の反重陽子)の高感度探索を通じてダークマター等の初期宇宙物理の課題に迫ることを最終目的とする。ダークマターの解明は現代の宇宙物理学・素粒子物理学における喫緊の重要課題の一つである。ダークマターの解明には多角的な研究が求められている。本研究では、宇宙線反重陽子という新しい手掛かりを開拓することで、他実験とは異なる視点からダークマターの正体に迫り重要な知見を提供することができる。その学術目的に迫るため、反粒子宇宙線観測計画GAPS(General Anti-Particle Spectrometer)を推進している。GAPSの測定器は、主にシリコン検出器トラッカとプラスティックシンチレーションカウンタ群で構成され、エキゾチック原子の崩壊過程を利用した新しい粒子識別手法を導入する。この新手法により、測定器の大型化を実現する。NASA南極周回気球によって約1ヶ月間の長時間観測を高空にて複数回実施し、稀少な反粒子を探索する。GAPSは従来に無い新しいコンセプトに基づく測定器であることから、気球による観測本番の実施に先立ち、地上(実験室内)や環境試験設備(真空チャンバなど)での動作確認が欠かせない。2023年度は、米国カリフォルニア大学バークレー校にてGAPS測定器フライトモデル(実機)の総合組立を実施した後、米国NTS社の大型チャンバを利用した真空環境試験を実施し、測定器システムの耐性を確認した。その後、米国内の拠点をコロンビア大学ニービス研究所に移し、GAPS測定器の総合試験を重ねた。
3: やや遅れている
本研究で計画するGAPS測定器による宇宙線観測は、それに先立ち米国の研究協力者と共同で米国NASAにて噛合せリハーサル試験を実施する必要があり、2023年度中に予定していた。しかし、当初の想定に反して米国機関のスケジュール変更が生じることが判明したことから、噛合せリハーサル試験の実施を2024年度に繰り越した。ただし、それに伴い、米国での総合試験には十分な時間を充てることができるようになったことから、GAPSの測定器開発および科学観測実現という本研究計画の最終目標には影響していないと考える。
GAPS測定器フライトモデル(実機)の総合試験を米国コロンビア大学ニービス研究所にて重ねた後、米国テキサス州のNASA/CSBF本部にてNASA気球バス機器との噛合せリハーサル試験を実施する。その後、測定器システム一式を南極マクマードに輸送し、南極にて最終準備を行ったうえで、気象条件が適合する機会を狙って南極周回気球フライトによる反粒子宇宙線を観測し、科学データを取得する。
本研究で計画するGAPS測定器による宇宙線観測は、それに先立ち米国の研究協力者と共同で米国NASAにて噛合せリハーサル試験を実施する必要があり、2023年度中に予定していた。しかし、当初の想定に反して米国機関のスケジュール変更が生じることが判明したことから、噛合せリハーサル試験の実施を2024年度に延期し、当該試験に係る器材調達費や米国出張費を2024年度に繰り越した。2024年6月までに米国NASA/CSBF本部にて噛合せリハーサル試験を実施し、2024年12月に宇宙線観測を実現する計画である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
Journal of Evolving Space Activities
巻: 1 ページ: 2_1~8
10.57350/jesa.2
巻: 1 ページ: 9_1~7
10.57350/jesa.9
https://gaps.isas.jaxa.jp/