研究課題/領域番号 |
22KK0044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中川 広務 東北大学, 理学研究科, 助教 (30463772)
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研究分担者 |
吉田 辰哉 東北大学, 理学研究科, 特任研究員 (10938393)
堺 正太朗 東北大学, 理学研究科, 助教 (30801336)
青木 翔平 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (60773629)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | 火星 / 同位体 / 進化 / 水 / 大気 |
研究実績の概要 |
「火星は生命を保持しうる惑星環境だったのか」という学術的問いに答えることを目的とし、全く新しい2つの同位体分析手法を用いて過去に保有した水と大気量を明らかにする。独自の火星大気一次元光化学モデルを開発し、従来研究が考慮に入れていなかった光解離による同位体分別に着目した。その結果、CO中の炭素同位体13Cが170‰も枯渇することを示唆した。これは従来考えられてきた同位体分別効果よりも桁で大きな影響を与えうる驚くべき結果であり、15%も大気消失量推定値を下方修正する。この成果は、査読付き学術雑誌に出版済みである。また、欧州火星探査衛星TGO搭載赤外分光器NOMADを用いて、同位体導出に最適な波長域・吸収線を注意深く選定し、放射伝達コードによるリトリーバル手法を確立した。その結果、高度20-50kmのCO中の炭素同位体比の導出に成功し、強い13C枯渇を示唆したことは我々のモデル結果を支持する結果であった。この成果は、査読付き学術雑誌に投稿され、現在査読中である。海外共同研究者代表AnnC Vandaeleを東北大学に招聘し、NOMADデータ解析と数値モデル予測結果との定量的な比較議論を行ったとともに、海外共同研究者らを招聘し、NOMADサイエンスチーム会合を国内松島で開催、NOMADチームメンバーに広く本研究をアピールするとともに大学生らを交えた議論を推進することができた。MMX搭載質量分析器MSAの開発ならびに観測運用検討も計画通りに進んでいる。MSAとNOMADの観測結果を結合するための電磁流体モデルの開発も順調に進み、次年度の論文化を目指す。同位体分別に影響を与える表層付近の水やりとりの研究も成果があがりつつあり、次年度のモデル結合を目指す。一連の成果は、国内外の学術会議にて成果報告がなされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的の達成には、欧米が得意とする掩蔽観測を更に発展させ、「火星大気中の同位体遠隔分析手法」を新たに確立し、日本が世界に先駆けて実現する「宇宙空間での消失大気中 の同位体その場分析」を緊密に組み合わせた新たな分析手法・国際共同研究を実現する必要がある。予察的に進めていた一次元光化学モデルの成果を査読付き学術雑誌に出版することができただけでなく、欧州火星探査衛星TGO搭載 NOMADを用いた同位体遠隔分析手法を確立することに成功し、その解析結果から、火星大気中の炭素同位体比を導出することができた。初期成果を既に査読付き学術雑誌に投稿しており、当初の計画以上に進展している。海外共同研究チームとも対面にて密に議論を推進することができている。後者の、MMX搭載質量分析器MSAの開発ならびに観測運用検討も計画通りに進んでおり、順調と言える。MSAとNOMADの観測結果を結合するための電磁流体モデルの開発も順調に進んでおり、学術会議等で成果報告を実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、NOMAD初期成果の出版を目指すだけでなく、より多くの観測データを用いた炭素同位体比解析を進め時空間変動の可能性を探るとともに、酸素同位体比を組み合わせることで、初年度モデルによって得られた光解離効果の定量的な観測的実証を目指す。加えて、初年度のサイエンス会合でも話題にあがった超高層大気大循環による同位体分別効果を明らかにすべく、一次元光化学モデルと火星大気大循環モデルとの間での検討議論を進める。上記2つを推進するため、日本側研究者およびその学生の欧州滞在を予定する。また、2025年度から観測開始を目指すMMX/MSA同位体その場解析と上記NOMAD解析を結合するための電磁流体モデル成果の論文化を目指す。MMX打ち上げ目前に控え、MSA機器開発状況を踏まえて同位体導出精度を改めて見直すとともに、期待される導出精度でゴールとなる大気進化をどこまで制約することができるのかモデルの観点から議論を進める。
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