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2022 年度 実施状況報告書

ベトナムにおける未処理下水の環境放出が駆動する薬剤耐性因子の拡散と循環の実態解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KK0058
研究機関東京大学

研究代表者

春日 郁朗  東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (20431794)

研究分担者 長谷部 太  長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (20253693)
鈴木 裕識  岐阜大学, 工学部, 准教授 (20762272)
鈴木 仁人  国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70444073)
研究期間 (年度) 2022-10-07 – 2026-03-31
キーワード薬剤耐性遺伝子 / ベトナム / 下水
研究実績の概要

2023年2月に渡航し、ベトナム側共同研究者と研究打合せ並びに採材を実施することができた。日本の下水と比較して、ベトナムの下水の中には懸濁物質の濃度が非常に高いものがあり、ろ過の効率化を図ることが課題として明らかになった。ハノイ、ダナン、ホーチミンの都市下水を採水し、基礎水質、大腸菌、セフォタキシム耐性大腸菌の計数を行った。粗ろ過した試料から細菌画分を回収し、DNA抽出を実施した。更に、下水試料に臨床上重要な4種類の抗菌薬(セフォタキシム、メロペネム、コリスチン、チゲサイクリン)を添加して培地中で増菌培養を行い、重要な薬剤耐性細菌の集積を試みた。多くの試料において、一晩の培養で増菌が認められ、下水中にはこれらの抗菌薬に耐性を有する細菌が含まれていることが示された。また、同じ試料をガラス繊維ろ紙でろ過した後、固相抽出に供して、抗菌薬スクリーニングのための試料調製も現地で行った。固相抽出には、既報に準じてOasis HLBとAC2をタンデムに接続したものを用いた。
ベトナムの調査とは別に、わが国の都市下水も採取し、ベトナムの下水データと比較することを試みた。日本の下水試料を用いて、ハイブリッドキャプチャーによる対象遺伝子の濃縮を行い、次世代シーケンサーで薬剤耐性遺伝子の組成解析を試みた。その結果、およそ200種類程度の薬剤耐性遺伝子が検出された。流入水では、アミノグリコシド耐性遺伝子やマクロライド耐性遺伝子の存在割合が多いことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナの感染状況により、渡航ができるか懸念されたが、無事に初年度の渡航・調査を実施することができた。また、ベトナム側共同研究者との調整も無事に行うことができた。

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続き、ベトナムでの下水調査を継続する。また、比較対象としての日本の下水採取も進める。ベトナムの調査地点としては、ハノイ、ダナン、ホーチミンに加え、バクニン(ハノイ郊外の近郊都市)、ハイフォンも追加する。ハノイについては、調査頻度を増やし、3か月ごとの調査を企図する。その他の都市については、年度内1回の追加調査を企図し、DNA解析並びに抗菌薬解析のための試料の蓄積を進める。
また、昨年度に得られた試料の解析にも着手する。DNA試料については、定量PCRにより薬剤耐性遺伝子やインテグロンの濃度を定量すると共に、メタゲノム解析による網羅的なスクリーニングを進める。メタゲノム解析については、昨年度実施したハイブリッドキャプチャーによる濃縮を行う手法だけではなく、ロングリードシーケンサーを用いて直接DNAを解析に供することも試み、プラスミドやファージ画分に存在する薬剤耐性遺伝子についても考察を行う。更に抗菌薬で集積した培養系についても解析を行い、臨床上重要な薬剤耐性遺伝子の存在状況についての知見を得る。
抗菌薬については、飛行時間型質量分析計を用いたサスペクトスクリーニングを行い、下水中に含まれる抗菌薬やその代謝産物の存在状況に関する基礎データを得る。サスペクトスクリーニングのためのデータベースを拡充してスクリーニングの対象範囲を広げると共に、検出頻度の高い成分を抽出して、個別定量の可能性についても検討を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] ベトナムにおける薬剤耐性菌のワンヘルスアプローチによるサーベイランス2023

    • 著者名/発表者名
      春日郁朗
    • 学会等名
      第96回日本細菌学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 水環境における薬剤耐性問題2023

    • 著者名/発表者名
      春日郁朗
    • 学会等名
      東大水フォーラム公開シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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