研究課題/領域番号 |
22KK0064
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺本 篤史 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (30735254)
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研究分担者 |
佐藤 賢之介 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20821606)
中嶋 麻起子 広島工業大学, 工学部, 助教 (40773221)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 微生物 / 中性化 / 硫酸塩劣化 / 塩分浸漬 / 多様性指数 / DNA抽出 |
研究実績の概要 |
本研究は,「WG1:コンクリートの劣化進展の定量的評価」,「WG2:コンクリート内部の微生物群集の解析手法の確立」,「WG3 コンクリート表層と内部の微生物群集の分布評価」から構成されており,2022年度は主に,WG1とWG2に関する実験的検討を推進した。 WG1では,研究代表者と山梨大学佐藤助教が各研究機関で劣化を誘発する試験体を作製し,劣化の進行に伴う含水率,空隙構造,細孔溶液のイオン組成の変化を実験的に取得することを目的としている。本研究で対象とするコンクリートの劣化現象は,中性化,硫酸塩劣化,塩分浸漬であり,研究代表者が過去に作製したアルカリ骨材反応による劣化が生じた試験体も分析対象としている。 2022年度は,これらの劣化を有する試験体の作製を行った。広島大学でφ100-200mmの円柱のコンクリート試験体を作製し,水中養生で3か月程度養生した後,試験体を2つのグループに分け,一つ試験体群は広島大学で中性化促進試験に供した。中性化促進試験はCO2濃度が5%および20%の2種類の環境で実施し,異なる中性化深さを持つ試験体を作製している。もう一つの試験体群は山梨大学に送付し,硫酸塩劣化および塩分浸漬試験を実施している。以上の試験体は,2023年7月まで促進劣化を継続し日本国内で材料分析を行うとともに,デラウェア大学のMaresca博士の研究室に送付し,WG2の微生物分析に供する。 また,WG2の検討で実施するMaresca博士考案のDNA抽出プロトコルと比較するため,コンクリートおよび原料を対象として市販のDNA抽出キットを使用してDNA抽出作業を実施した。DNA濃度が低いコンクリート試料に対して市販のキットを用いるとDNA総量が不足する懸念があるが,高精度の微量分光光度計,および蛍光高度計を使用することで,DNA濃度を定量可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始が年度途中の10月であったため,本年度の成果は試験体の作製と促進劣化を実施するにとどまっており劣化試験体の分析結果はまだ出ていない。しかし本研究で実施するコンクリートの劣化は比較的緩慢に進むものであるため事前の計画の範囲内であり,おおよそ順調に進展しているといえる。 劣化を促進するための備品類の納品や微生物分析を行うための消耗品類の準備も順調に進んでおり,2023年度に各種の劣化が進展した後の分析作業の準備は整いつつある。デラウェア大学のMaresca博士とも定期的に連絡を取り合っており,2023年度に渡米して実験を実施する段取り(試験体及び研究者の受け入れ準備)も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,促進劣化を行った試験体の材料分析および,内部に生息する微生物の分析が主たる課題になる。この際,WG1で作製している各種劣化(中性化,硫酸塩劣化,塩分浸漬)はそれぞれ劣化の起点が異なっているため,WG2では試料採取位置のパラメータとして劣化起点位置を想定し,非加熱,乾式のサンプリング方法を採用する。 採取したコンクリート試料の一部は国内で材料分析に供し,残りの一部はMaresca博士の研究室に持ち込み,オートクレーブ滅菌を施したガラスビーズを用いて粉砕し,0.5M EDTAで洗浄して二価カチオンを除去した後,Maresca博士が考案したプロトコルによりDNAを抽出する。抽出したDNAはInvitrogen Qubit2.0蛍光光度計で定量するとともに,16S rRNAのV3-V4領域をターゲットとするプライマーを使用して増幅し,300bpペアエンドリードを使用してイルミナMiSeqシステムでシーケンスを行う。得られた塩基配列から不純物と有効物質を分類し,有効物質を対象に統計分析により各種の多様性指数を算定する。以上の手順により各種劣化の評価に適当な微生物群集の多様性指数を取得する。 WG3では,WG1で作製した劣化試験体のうち表層から進行する劣化(中性化,外部硫酸塩劣化)を検討対象とし,試験体深さ方向をパラメータとして表層から内部の微生物群集の空間分布を取得する。外部硫酸塩劣化では,硫酸イオンの浸透に伴いモルタルマトリクスの膨張による剥離やポップアウトが予測されるため,表層部および膨張起点前後の位置を対象に微生物群集の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の資源不足により実験に用いる環境測定機器の納品時期が未定となっていた。そのため,年度末までの納品が可能であるかどうか未確定であり予算処理の都合上,次年度使用額が生じたものである。機器の発注は継続して依頼しており2023年度始めに納品予定である。
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