研究課題/領域番号 |
22KK0068
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河口 智也 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00768103)
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研究分担者 |
下川 航平 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30876719)
市坪 哲 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40324826)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | X線解析 / 二次電池 / ハイエントロピー酸化物 / 酸化物正極材料 |
研究実績の概要 |
本研究では,第4世代放射光施設が利用可能になる米国の研究機関と国際共同研究を実施することで,蓄電池に用いるハイエントロピー酸化物(HEO)正極材料の充放電機構を解明し,HEO正極材料の合理的設計に資する学理構築を目指す.代表者らはこれまでに配置エントロピーによる様々な効果を利用した新たな材料群であるHEO正極材料を,リチウムイオン電池(LIB)及びMg蓄電池(RMB)の分野で開発してきた.この材料群でさらなる合理的な材料設計を実現するためには,HEOを構成する多数のカチオン元素の協奏的な相互作用と,その結果として現れる充放電機構を理解する必要がある.そこで本研究では,米国が建設を進める次世代放射光施設を利用した先進的X線解析手法を用いて,新規HEO正極材料の充放電機構解析を行うことで,高性能HEO正極材料開発の指針を示すことを目指す. 2023年度は,上記の分析を実現するための透過型X線その場測定用試験電池を試作し,電気化学試験ならびに実験室X線源を用いたその場測定を実施した.LIB電極材料を用いたその場測定ではセルは問題なく作動し,その場X線回折測定が実施できた.一方で,RMB電極材料を用いた測定では,その場測定セルを用いた電気化学試験が正常に行えなかった.この原因を解明すべく,電解液,セパレーター,参照極,セル筐体などの様々な組み合わせで,電気化学的な安定性を検証した.その結果,一般的な金属で最も耐食性が高いステンレス鋼製のセル筐体であっても, RMBで用いられる電解液との相性が悪く,特に高電位領域では腐食することが示唆された.また,参照極に一般に使用される電解液とステンレス鋼製のセル筐体との相性の悪さも示唆された.そこで,セル筐体のうち,電解液に触れる部分の金属を任意に選択できる,新たな透過型X線その場測定用試験電池を設計・製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り,本年度では研究に必須のその場セルの開発と試験を行い,実験室X線を用いて実証試験を行った.またこれらの検証で明らかになった問題点を解決したセルを新たに設計・製作しており,研究の進捗としては順調である
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今後の研究の推進方策 |
製作した改良版のその場測定セルを電気化学試験の観点から評価するとともに,実験室X線源を用いた予備検討を行う.また,米国の放射光施設のアップグレードが終了し次第速やかに実験が行えるよう,共同研究者と連携して測定時間を確保するとともに,可能であれば国内放射光を用いた予備測定を実施する.さらに,材料開発のプロジェクトと連携することで,分析対象とする最適な系の選定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,その場X線測定セルの作製において試作段階で改良が必要であることが明らかとなったため,動作が担保されたセルの複数個の作製が翌年度以降となったためである.翌年度分として請求した助成金は,改良型のその場測定セルの作製や実験の実施,必要装置の購入等で使用する予定である.
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