研究課題/領域番号 |
22KK0069
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
富永 洋一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30323786)
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研究分担者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
田中 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50830387)
中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345099)
一川 尚広 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80598798)
大橋 秀伯 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00541179)
兼橋 真二 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80553015)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | 固体高分子電解質 / 電極/電解質界面 / 表面改質 / 塗布・乾燥・成膜プロセス / フレキシブルLi金属二次電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、固体高分子電解質(SPE)の高分子材料としての特有の固体物性に着目し、SPEを固体電解質とするLi金属二次電池の国際共同開発を目指している。当該年度は、Li負極の最も大きな問題であるデンドライトの生成を抑制し、かつSPEとの良好な界面を形成するLi表面改質技術を開発するために、その基盤研究となる装置の導入や実験環境の整備を行った。具体的には、1) 正極の塗布・乾燥・成膜プロセスの開発について、良好なSPE固体界面形成のための表面改質に適した正極作製プロセスの確立を目指すため、本年度は基本的な正極合剤用素材の選定および塗布乾燥過程の条件設定を行った。本年度予算で導入した真空蒸着装置を用いて、Li負極のモデルとなるAl基板表面にポリアクリル酸リチウムを真空蒸着させることに成功した。今後は、大気非暴露ユニットを用いたLi金属表面への真空蒸着を試みる。以降、2) Liイオン伝導性に優れるSPEの開発、3) 表面・界面構造の解析、4) 試作電池の充放電特性評価、につながる。最終的には、高容量かつ充放電サイクル性に優れるSPE蓄電池の基本形を創出する。従来型の蓄電池やこれまでの次世代蓄電池の研究では、Liのアロイ化やコーティング手法の開発、正極表面改質法の開発、新しいSPEの開発など、それぞれの要素研究に特化した例は数多く報告されているが、SPEを中心に各要素研究を融合した系統的かつ学際的研究にまで及ぶ共同研究は国内外を通じてほとんど例が無い。本研究は、電気化学や材料科学のみならず、化学工学や表面化学など様々な研究分野を専門とする研究者により組織されているため、系統的かつ学際的研究の取り組みが必要不可欠な本研究に適した創造性の高い研究体制である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液系のLiイオン二次電池において充放電特性の向上が報告されているLi表面へのポリアクリル酸リチウム(PAALi)薄膜の被覆効果を参考に、当該年度は、本予算で購入した大気非暴露型の真空蒸着装置を用いて物理蒸着法によりPAALiの極薄膜をLi表面に形成することを試みた。まずは、PAALiのLi表面への真空蒸着の条件を絞り込むため、Li表面を模倣したAl基盤表面への極薄膜形成を様々な条件で検討した。重量平均分子量1.6×106のPAALiを高真空中で412℃に加熱すると、約6 nm/min の速度で蒸着膜が形成された。PAALiのモノマーは400℃で蒸発し、約10 nm/min の速度で蒸着膜が形成されたことも分かった。PAALiのスピンコート膜および真空蒸着膜のIR スペクトルからは、両者がほぼ同一のスペクトル形状示し、PAALiの分子構造を保って蒸着膜を形成できることが分かった。モノマーのKBr錠剤及び真空蒸着膜のIRスペクトルからは、蒸着膜がPAALiと同一のスペクトルを示し、ビニル基のC-H 伸縮の吸収が消失する一方で、アルキル鎖のC-H 伸縮の吸収が現れたことから、モノマーの蒸着によってAl基板表面に重合膜が形成されることが示唆された。蒸着膜のAFM像からは、平均粗さRa がPAALiでは8.6 nmであるのに対し、モノマーが6.4 nmであり、平坦性に優れた薄膜が得られることが分かった。以上の結果から、真空蒸着法はPAALi薄膜を形成するための有用な手法であると考えられ、蒸着材料としては高分子とモノマーのいずれでも同様に薄膜を形成できることも明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、稲澤がフェラーラ大学に渡航して化学工学の観点から正極の成膜プロセス(塗布乾燥)と膜構造の関係を明らかにする予定である。富永は、既に予備実験で効果が見られている酸素プラズマ法を本研究に活用し、本研究の正極表面改質を達成する最適な処理条件を決定する。Liイオン伝導性に優れるカーボネート型SPEを開発する。富永・中野がウプサラ大学に渡航してCO2/エポキシド共重合体の分子設計および合成を行い、SPEとしての最適構造を共同開発する予定である。専門の高分子合成技術を活用し、SPEの内部抵抗低減ための薄膜化技術を開発する。各電極表面および充放電前後における電極/SPE界面の構造変化を解析する。一川がシェフィールド大学に渡航して斜入射非対称X線回折法-薄膜測定法やコンダクティブ原子間力顕微鏡を駆使し、表面・界面の構造変化と充放電特性との関係を明らかにする予定である。田中は、一川・海外機関と連携して構造解析結果とLi表面改質との関係性を明らかにする。以上の成果をもとに、試作LMBの総合的な電池特性評価を行う。富永が中心となり、フェラーラ大学およびCIC energiguneにそれぞれ渡航して各要素研究へのフィードバックを行う予定である。あわせて、若手の田中・木村は、国際学会へ参加して様々な国・研究機関の研究者との交流を積極的に行うことで、新たな国際共同研究のネットワーク構築の基盤を作る予定である。
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