研究課題/領域番号 |
22KK0087
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
江口 克之 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30523419)
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研究分担者 |
小栗 恵美子 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (10608954)
吉田 貴大 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (30868451)
Francesco Ballarin 東京都立大学, 理学研究科, 特任助教 (50914462)
Nguyen DucAnh 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (70828946)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | DNA barcoding / インドシナ / 土壌棲節足動物 / 定量調査 |
研究実績の概要 |
本研究の対象となる土壌棲節足動物の採集方法を、代表者と研究分担者の吉田、Nguyen DA、F Ballarinが手分けをして、日本国内およびベトナムで行った。その結果、以下の複数の方法の組み合わせが適していると判断された:(1) シフターで振るった後の腐植物を対象としたハンドソーテイング、(2) シフターで振るった後の腐植物を対象とした設置型(移動可能)ウィンクラー装置での抽出、(3) ピットフォールトラップ(エタノールのみでの誘因)、(4) 朽木を対象とした羽化トラップ(朽木から羽化・発生した昆虫類をトラップする装置)、(5) 目視探索での一般採集。ウィンクラー装置については、研究代表者である江口がいくつか試作する中で、安価で入手可能な部品を組み合わせた、携帯性の高いものを完成させた。 2023年3月にベトナムのDien Bien省(各地の森林)、Lai Chau省(Muong Te自然保護区)、Ha Tinh省(Vu Quang国立公園)、Nghe An省(Pu Hoat自然保護区)にて、予備的調査を実施した。コロナ禍後にはじめて実施する野外調査であったので、ベトナム生態学生物資源研究所(IEBR)との連携、研究許可関連の手続きなどの確認を行った。その上で上述のように調査方法の検討を行った(その際得られた標本は、2023年度前半に行うMinIONシーケンス実験系立ち上げの際の、試行用サンプルとする)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの開始の時期に、コロナ禍の収束の見通しが立ちはじまたため、本研究の共同研究先であるベトナム生態学生物資源研究所(IEBR)およびラオス国立大学(NUOL)との共同研究の再起動に取り掛かった。2022年10月にラオス国立大学より2名の留学生の受け入れができたこと、また2023年3月にベトナムにて野外調査を実施できたことから、ベトナムおよびラオスでの国際共同研究が、コロナ禍前と同じように実施可能であることが確認できた。 前述の通り、本研究の方法の要となる土壌動物の定量サンプリングの手法について、日本国内およびベトナムである程度確認ができた。 2023年3月のベトナム訪問の際に、本研究の分担者Nguyen DAがPIを務めるIEBRの土壌生態学分野を訪問し、本研究の要となるMinION次世代シーケンサーを用いたin-situシーケンスを実施可能な実験室を有することを確認した。 このように、初年度(10月スタートのため、およそ6ヶ月)のスタートアップ期間で行うべきことは概ね実施できた。よって、本研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は8月にラオス(吉田、NUOLの留学生2名)、9月と3月にベトナム(江口、Ballarin、Nguyen DA)への出張(野外調査、IEBRやNUOLでの標本整理・解析や打ち合わせ)を予定している。 9月のベトナム出張までに、研究代表者の研究室にてMinIONシーケンスの実験系を立ち上げた上で、9月のベトナム出張の際にその実験系を機材とともにIEBRのNguyen DAのラボに移植する計画で、準備を進めている。 8月のラオス出張に関しては、調査地の検討を進めている。一方、9月のベトナム出張では、ベトナム北部のCuc Phong国立公園、ベトナム中部高原地帯のKon Ka Kinh国立公園とKon Chu Rang自然保護区で野外調査を実施する予定である。2024年3月のベトナムでの活動の内容は調整中である。 本研究の基本コンセプト(DNA塩基配列情報に基づく種認識を先行させて、後追いで、リンネ式分類体系との整合性を調整する)の具体例となる研究の結果をまとめた論文を1編投稿中、1編を準備中であり、それらについては、受理された段階で、プレスリリースなどの手段で対外的に積極的にアピールする。 研究代表者の研究室では、様々な土壌動物を対象とした系統分類学的、系統地理学的研究を、東南アジアや東アジアから得られた標本をもとに進めている。それらの研究の進捗を踏まえて、本研究において特に着目する分類群について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の開始時点では、研究代表者である江口はコロナ禍によって約3年にわたって海外調査を中止していた。そこで、初年度(2022年度下半期)は本研究のスタートアップ機関と位置付けて、大規模な海外調査は2023年度以降に先送りをし、小規模な出張計画で現地視察と予備調査を実施した。また本研究費および大学の運営交付金を利用して、調査・実験のプロトコルの精緻化を行った。そのため、当初の予定よりも、実際に用いた研究費は大幅に少なくなった(主に、大規模な野外調査を2023年度以降に先送りしたことによる)。 2023年度は繰越金と合わせた予算を用いて、MinIONシーケンサーを中核とする実験系を立ち上げ、ベトナムに移植するとともに、ベトナムとラオスで本格的な野外調査を実施する。
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