研究課題/領域番号 |
22KK0105
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
山崎 曜 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (40816021)
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研究分担者 |
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
石川 麻乃 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20722101)
細木 拓也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD) (80965773)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 収斂進化 / 突然変異順序 / 予測可能性 / 適応進化 / トゲウオ |
研究実績の概要 |
進化はどの程度まで予測可能だろうか?異なる系統が同じ環境に進出することで類似の形質が進化する現象である収斂進化を比較することで,共通点(=予測可能な点)と相違点(= 予測不可能な点)を解明できる.トゲウオ科のイトヨでは,日本,カナダ,スイスの淡水域において防御形態である鱗板の減少が収斂進化している.この原因突然変異が生じた順番に予測性はあるのだろうか.本研究では,イトヨでの鱗板の収斂進化を引き起こす突然変異の固定プロセスに予測可能性があるのかを,突然変異の順序の推定,突然変異間の相互作用の検証,突然変異の効果の大小と進化順序の相関の検証を通じて明らかにする. 本年度は以下の研究を行った.まず異なる原因変異間での負の相互作用による適応度の低下を検証するため,昨年度に野外実験池に放流した日本とカナダの鱗板欠損型の間でのF2を回収し,適応度に関連する複数の形質を計測した.予想されたようにF2では鱗板枚数の超越分離が観察された.親集団はいずれも鱗板数が6枚程度だが,F2個体は1から20枚以上と多様だった.またRAD-seqにより各個体の遺伝子型をゲノムワイドに取得した.鱗板変異の原因遺伝子であるEdaとEdarに集団間で独立に生じた突然変異の間に有害な相互作用が存在する可能性を検証したが,生存個体からは遺伝子型の分離比の歪みは検出されなかった.そこで成長率への負の影響を検証するため放流前の個体からも遺伝子型を取得し,放流前後の個体の対応付けを行った.現在このデータを解析中である.2023年度にも引き続き同様の実験を行うため,野外実験池にF2を放流した.またKatie Peichel教授より送付されたスイスの鱗板欠損型と日本の鱗板欠損型の間でも交雑家系を作成した.現在F1を育成中であり,2024年度の秋頃にF2を野外実験池に放流予定である.以上の経過について海外共同研究者と議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,日本とカナダの雑種家系を用いた野外池での実験が終了し,データが得られたため.また日本とスイスの雑種家系についての実験の準備も行うことが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の研究を行う.まず2023年度に野外実験池から回収した日本とカナダの雑種集団を用いて,成長率と遺伝子型の関連を解析する.さらに追加で放流したF2を2024年度の春に回収する予定であり,こちらも同様に遺伝子型と成長率および死亡率との関連を解析する.日本とスイスの雑種からF2を作製し,同様に秋頃に野外実験池に放流する.日本の鱗板欠損型の原因領域を絞り込むために,日本の鱗板完全型と欠損型の間でのQTLマッピングを予定している.現在F2を1000~2000個体飼育しており,これらが成長した後にQTLマッピングを行う.原因領域の絞り込みに成功した場合はそれらの領域に変異が進化した時期をAncestral Recombination Graph解析により推定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
日本の鱗板完全型と欠損型の間でのF2の生育に時間を要し,遺伝子型や表現型の決定が次年度に持ち越しとなった.そのための次世代シーケンス費用は今年度に使用する予定である.また今年度も野外池からのF2の回収を予定している.それらの遺伝子型決定にかかる費用に充てるため,次年度に一部の予算を回すことが最も建設的と考えた.
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