研究課題/領域番号 |
22KK0111
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
宮本 洋一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, サブプロジェクトリーダー (10379084)
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研究分担者 |
岡田 由紀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (60546430)
原 聡史 佐賀大学, 医学部, 助教 (80739582)
小井土 大 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (40787561)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 精子細胞形成 / 女性不妊症 / 卵 / 核輸送 / インポーティン / クロマチン |
研究実績の概要 |
本研究は、核-細胞質間タンパク質輸送を担う分子がヒトやマウスなど哺乳類の配偶子形成にどのように寄与し、またその機能不全が不妊症発症にどう関係するかを理解しようという国際共同研究である。本課題では特に、核局在化シグナル(Nuclear localization signal: NLS)受容体として知られるImportin-αファミリー分子に着目して研究を進めている。Importin-αはマウスで6種類、ヒトで7種類のサブタイプが存在して、それぞれが基質特異性と細胞や組織での発現特異性をもって機能している。我々はこれまで、Importin-α4 (別名KPNA4)の遺伝子ノックアウト(KO)マウスが精子の形成異常に起因した雄性不妊症を発症することを見出し報告してきた。今回、精細管培養法の習得および実験遂行を目的に渡豪し、成体ならびに生後0日目のマウス精巣を活用した実験を行った。さらに、マウス精巣切片組織を対象とした広範囲な画像解析法の習得も行った。 女性不妊症の原因の一つとして知られる着床前胚停止(Preimplantation embryo arrest: PREMBA)にImportin-α8(別名KPNA7)の点変異が関係することを発見し、その変異による不妊症発症メカニズムの解明研究を中国のグループと実施した。見出した点変異は、NLS認識部位に存在していることに着目し、変異型Importin-α8の組換えリコンビナントタンパク質を作成してセミインタクト核輸送実験系により検証した。その結果、見出した変異型Importin-α8はどれも核輸送能が顕著に低下していることがわかった。さらに、変異による核輸送機能の低下が卵形成に重要な分子RSL1D1の核局在と機能発現に影響することを明らかにし、女性不妊症発症の分子メカニズムの一端を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究代表者が豪州の共同研究者のもとに出向きマウス精細管培養法、精巣切片画像解析法の習得ならびにそれらの方法を用いた実験を行った。さらに、当地での研究発表に加え、今後の共同研究ネットワークの構築について複数の研究者と精力的に面談を行った。 中国との共同研究においてはコロナ禍での出入国制限により渡航を控えたが、緊密な連携を行うことで当該研究成果を論文として発表することができた。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
豪州との共同研究に注力し、日豪の共同研究者と緊密な連携を図ることでさらなる研究を遂行するとともに両国間の研究者ネットワークの構築を進めていく。特に、Importin-α4に着目し、KOマウス由来精子が示す形成異常の分子メカニズム解明を目指し研究を進めていく。また、KOマウス由来の精子細胞が酸化ストレスに感受性が高いとするこれまでの研究結果を踏まえ、精細管培養法を用いたストレス応答実験を進めていく。Importin-α8に関しては、他のImportin-αサブタイプと異なり主に核に局在してクロマチン機能を発揮することが示唆されていることから、特にエピゲノムの視点から研究を遂行していく。加えて、ヒトの不妊症に関する公共データベースを活用し、核輸送分子の発現や機能がどのように不妊症発症と関連しているかをインフォマティックの手法を駆使して明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延による渡航制限の影響、試薬等の調達遅延が生じたため繰越金が発生した。次年度には渡航費を別途計上していることから、本繰越分は消耗品費として細胞培養試薬、生化学試薬費の購入に使用する。
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