研究課題/領域番号 |
22KK0122
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451999)
|
研究分担者 |
小柴 和子 東洋大学, 生命科学部, 教授 (30467005)
岩田 こころ 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 医員 (30963962)
井関 祥子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80251544)
岩本 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90346916)
|
研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
|
キーワード | 先天異常 / 心疾患重症化 / 3D空間解析 / 非コードRNA / ヒストン修飾因子 |
研究実績の概要 |
心臓―四肢症候群は、ヒト先天異常症において心臓―上肢形成不全だけでなく高い発症率で頭部(頭頸部)形成不全を伴う。近年、共役因子依存的に組織特異的な形成に機能するエピゲノム因子が報告されたことにより、申請者はヒトHolt-Oram症候群(HOS)モデルとなるTbx5遺伝子破壊マウスを用いて本課題に取り組んでいる。本年度においては、新規非コードRNA、および、ヒストン制御因子に焦点をあて遺伝子破壊マウスを作成して頭頸部・心臓・上肢形成異常の解明を目指してきた。2022年度に遂行した研究結果を下記に記す。 1;Tbx5;Gm5563多重遺伝子破壊マウスの形態解析:CoMBI/EFICを用いた3D空間解析により内部構造の詳細なデータを得ることができた。心室肉柱と房室中隔構造の消失、心房構造の縮小または消失、第一第二咽頭弓の融合または消失、が見受けられた。Tbx5単独のKOでは見受けられないこと、かつ、HOS患者ではレアなケースではあるが前述のような形態異常は報告されていることから、TBX5と遺伝的相互作用する機能性エピゲノム因子であると考えられる。 2;Tbx5; Gm42017多重遺伝子破壊マウスの形態解析:iGONAD法を用いて多重遺伝子破壊マウスの作成に成功している。心臓形態異常はTbx5単一遺伝子破壊マウスとほぼ同程度であったのに対して、Tbx5+/-;Gm5563+/-マウス胚心臓ではTbx5+/-マウスと同程度の表現型であったのに対し、上肢においてはTbx5単一遺伝子破壊マウスと同程度の発生異常が見受けられた。このことから二つの非コードRNAによって、Tbx5は特異性を獲得していると考えられる。 3;Ring1;Tbx5多重遺伝子破壊マウスの形態解析:頭部間葉系細胞の分化異常が見受けられた。血管への分化転換の可能性が高く、メカニズム理解に向けて次年度に取り組む。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3つのプロジェクト各々での遺伝子破壊(KO)マウスでの形態異常のデータ獲得が得られた。また、それぞれのKO マウスの表現型から機能性の相違が考察されたことから、次年度における研究方向性が明確となった。2023年度中までに解析終了予定であったことから前倒しで研究計画に臨むことが可能となった。すでに、トランスクリプトーム解析、エピゲノム解析を開始しており、2023年度内において分子メカニズムを明らかにできる可能性が高まった。また、シングルセル解析結果の研究は現在投稿中である。これらのことから、総合的観点からも研究は順調に進んでいると考えられる。コロナの影響がまだ解消しておらず、海外学会にて発表し共同研究先との研究議論の機会が得られなかったことが唯一残念であ理、次年度では交流を深められるように計画する。
|
今後の研究の推進方策 |
本申請研究計画は5つのカテゴリーで構成されている。Aは現在投稿中、Bは作成済み、Cは構築済み(改良を目指す)、Dは現在進行中、Eは次年度計画(海外共同研究先との連携)であり、2023年度ではDのゲノム制御機構の理解を目指す。2022年度に作成済みの3つの疾患モデルを用いて、3つの実験を計画している。 1:トランスクリプトーム解析:各々のKOマウス系統において、特異的に発現変化している遺伝子群を選出し規則性を見出す。 2:エピゲノム制御解析:ヒストンChIPseqを用いて、ヒト疾患重症化を引き起こすエピゲノム因子の組織特異的なゲノム制御領域を同定する。2つの非コードRNAとヒストン制御因子のゲノム上での結合領域は同定済みであるため(論文投稿準備中)、共同研究先のNGSを用いたゲノム結果 (ChIPseq/ATACseq)を統合した速解読解析システムを有効に利用して、網羅的な結合領域の同定を行い、このデータから規則性を見出す。さらに、HOS、DiGeorge疾患発症で共通に影響を受けるゲノム領域の特定を目指す。これらのデータを統合し、2023年度後半からヒト疾患iPSの作成および分化系を用いて同エピゲノム因子発現異常に依存したゲノム環境変化と疾患発症との相関性、変化領域における生物学的意味を明確化する。 3:海外国際学会にて報告し、共同研究先との研究議論を予定している。若手次世代人材を同行し、世界をリードしている研究機関の研究者との交流構築を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦のため海外学会の参加および現地での研究議論が難しく、さらに雇用する予定であった研究補助員も同様の理由で合流が難しくなった。そのため次年度2023への持ち越しとしたため。
|