研究課題/領域番号 |
22KK0142
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 敦子 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (00619885)
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研究分担者 |
RAHEL MESFIN・KETEMA 北海道大学, 保健科学研究院, 特任助教 (60964822)
宮下 ちひろ 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任教授 (70632389)
アイツバマイ ゆふ 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (90752907)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | 電気・電子機器廃棄物 / 環境化学物質 |
研究実績の概要 |
ベトナムの研究者と協力し、ベトナムにおけるこれまでの電気・電子機器廃棄物(E-waste)に関係する研究の文献レビューを実施した。非正規の電子廃棄物(e-waste)解体活動は、環境中に有害化合物を放出し、環境や健康に有害な影響を与える可能性がある。そこで本レビューでは、ベトナムにおけるe-waste処理に伴い排出される有害化学物質とその健康影響に言及した文献検索を実施した。ベトナムで関連する21の研究論文を抽出し、e-waste作業施設の粉塵、土壌、大気、堆積物などの汚染実態、ヒトの毛髪、血清、母乳サンプルを用いてた曝露評価に関する論文が報告されていた。E-waste地域とe-wasteの処理のない地域における暴露レベルを比較した研究では、E-waste地域の環境および生体サンプルの両方で、PBDE、PCB、重金属のレベルが高いことが確認された。E-waste処理地域では、作業者の血清サンプルからは年齢と相関してPCBレベルが高くなることが報告されていた。重金属のうち、鉛は飲料水、室内土壌、生体サンプルから高濃度検出された。また、米中からなNi、土壌や食事中のMn、粉塵中のZn、尿中のAs高濃度も検出された。ヒトバイオモニタリングでは、e-waste処理地域の子どもや母親は、e-waste処理地域外の調査参加者よりも高い健康リスクを有することが示された。このレビュー論文は、Reviews on Environmental Healthに発表した。 さらに、ベトナム研究者と研究打ち合わせを行い、調査プロトコールを作成中である。また、ベトナム側の参加機関としてベトナムNational Institute of Occupational and Environmental Healthの協力を得て、調査許可に向けた協力覚書を準備する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでのベトナムにおける調査研究の結果について先行研究の整理を行い状況を把握することができた。 研究の実施に当たっては、ベトナムの相手方研究者に加えてNational Institute of Occupational and Environmental Health研究者も加えて研究実施計画に関する相談と研究プロトコールの作成を推進している。研究計画に関する覚書の締結の必要があり、それら文書の作成に時間が必要となり若干の遅れがあるが、令和5年には調査実施地域を訪問し、具体的な調査実施に向けた準備が進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ベトナムを訪問し、調査研究地域の確認を行い、最終的な研究計画を確定させる。健康調査に用いる調査票および調査実施に用いるマニュアルのベトナム語への翻訳を行いう。調査対象者は、E-waste非正規処理地域を候補とする。各地域の住人は約1500 人で、これらの地域に居住する全世帯に調査案内および協力呼びかけを行う。地域の全住民を対象とすることで、E-waste従事世帯および従事していない地域住民との比較により、e-waste作業従事者により健康の問題が大きいかどうか比較が可能となる。過去の研究から50%を同意率ととし、750人程(150-200 世帯)の協力を得られる見込みとする。健康調査は、ベトナムの保健師等を調査実施者として雇用し、研究代表者、研究分担者、およびベトナムの協力研究者とともにベンチを訪問してインタビューの形で実施する。調査内容には、基本属性に加えて、居住歴、健康状況の把握、e-waste処理作業への従事状況、および従事ししている場合にはその作業時間、生活環境と作業環境の区別の状況などについて対象項目とする。併せて身長、体重、体組成、血圧、握力などの簡易的な健康測定を実施する。研究計画としては当初生体試料の収集を計画していたが、ベトナム側より倫理承認に時間がかかってしまうことの懸念が指摘されたことから、まずは健康に関する調査に簡素化して現地との調整を図ることとする。研究計画が確定次第倫理審査申請を行い承認を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する予定の体組成計および生体試料の保存に用いるための冷凍冷蔵庫の購入を計画していたが、実際に使用する機材等が未定のため、使用予定額(物品購入費として約1,680千円)を次年度に繰り越す。R5年度の7-8月にベトナムを訪問し、調査対象地域の視察及びベトナムのカウンターパートの施設を訪問、研究計画の詳細の打ち合わせを行う。その際に、実際に電源供給や運搬の実施可能性を考慮してベトナム調査で使用可能な体組成計を購入する計画である。また、調査開始に先立ち、対面調査の聞き取り内容をPCに直接入力し保存するためのシステムを構築する(約1,000千円程度)。12月―1月に再度ベトナムを訪問し、訪問調査を実施する。訪問調査の実施に当たっては3名×2回の渡航費として2,400千円程度がかかるみこみである。調査協力には謝金として200千円、調査実施協力謝金として400千円ほどかかる計画である。合計して当該年度所要額の5,720千円の執行を計画している。
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