研究課題/領域番号 |
22KK0148
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上野 貴将 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 教授 (10322314)
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研究分担者 |
BARABONA GODFREY 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特別研究員 (40906674)
野村 拓志 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 講師 (80711001)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 |
研究実績の概要 |
ムヒンビリ健康科学大学(タンザニア)との共同研究として、ダルエスサラーム市の3つの地域中核病院においてリクルートした200名の医療従事者より、ワクチン等の接種歴、新型コロナウイルスの感染歴を調査したところ、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種者は、10%(20名)にとどまっていた。COVAXを通じて新型コロナウイルスのワクチンは、タンザニアにも広く供給する体制が取られたことから、ワクチン接種が低い原因としては、パンデミック当初に大統領および政府が取った反ワクチンキャンペーンの影響と示唆された。さらに、提供を受けた血液は、ムヒンビリ健康科学大学の微生物学教室において血漿画分を分離し、凍結保管した。この検体を用いて、SARS-CoV-2感染の既往歴(スパイク蛋白質およびヌクレオカプシド蛋白質に対する結合体のレベル)を評価した。その結果、97%が新型コロナウイルスの抗体価で陽性を示したことから、ほぼ全員がパンデミック初期に新型コロナウイルスに曝露または感染したものと示唆された。一方、本人からの聞き取り調査では、入院が必要と判断された症例は6例と非常に少数にとどまっていた。これらのことから、タンザニアでは、パンデミック初期に新型コロナウイルス感染が広く蔓延したが、重症を示した症例は少数にとどまったと考えられた。このことは、タンザニアを始めとする東アフリカにおいて、新型コロナウイルスパンデミックで死亡症例が多くなかったことと整合性があると考えられた。この地域では、ワクチン接種が広まらなかった(強く推奨されなかった)ことから、新型コロナウイルスに対する免疫応答はほぼ自然感染によって成立したものと示唆された。これらの検体を用いて、これから来年度に向けて他のコロナウイルスに対する交差反応性について解析を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ムヒンビリ健康科学大学(タンザニア)との共同研究として、ダルエスサラーム市の3つの地域中核病院において200名の医療従事者で構成されるコホートの樹立に成功し、ワクチン等の接種歴、新型コロナウイルスの感染歴などの疫学的調査を実施できた。また、同時に採取した血液検体を用いて、新型コロナウイルスに対する抗体価および中和活性を解析する体制が整った。今後は、他のコロナウイルス群に対する交差反応性の解析を進めて行く予定。
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今後の研究の推進方策 |
ムヒンビリ健康科学大学(タンザニア)と共同で構築した医療従事者コホート(ダルエスサラーム市の3つの地域中核病院、200名)は、感染症流行時にフロントラインを構成すると考えられる。今後はこのコホートを用いて、血液中の新型コロナウイルス(各種変異株を含む)に対する抗体価および中和活性の解析を進めて行く予定である。同時に調製した細胞画分を用いて、エリスポット法などにより、細胞性免疫の交差反応性を解析するアッセイ系の立ち上げを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象者のリクルートおよび採血などに日数を要したため。実験に必要な試薬や消耗品の調達およびタンザニアへの送付に日数を要したため。
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