研究課題/領域番号 |
22KK0150
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
有馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
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研究分担者 |
田中 章太 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (40783684)
川ノ口 潤 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (50752979)
王 桂鳳 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 助手 (70909374)
大西 志保 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (80511914)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | 肝吸虫 / 胆管癌 / 肝細胞癌 / 炎症 / 8-ニトログアニン / 肝硬変 / クロノルキス・シネンシス / SOX9 |
研究実績の概要 |
研究背景:肝吸虫Clonorchis sinensis (CS)感染症は胆管癌の危険因子である。疫学研究では、中国の流行地域における肝細胞癌 (HCC)患者の10%以上で肝吸虫症がみられ、CS感染と肝細胞癌発生率上昇に関連が示されているが詳細は不明である。本年度は、CS感染によるHCC発症をラットモデルを用いて検討した。 方法:感染実験は中国のCS生息地域で実施した。Sprague-Dawleyラットに、CSメタセルカリアを胃内投与し(感染群)、変異原物質ジエチルニトロソアミン(DEN)を腹腔内投与した(DEN群)。陰性対照群(NC)は生理食塩水を胃内投与した。感染DEN群は、CSメタセルカリア投与に続いてDEN投与を行なった。組織病理学的分析のために、ヘマトキシリン-エオジン染色、免疫組織化学およびマッソントリクローム染色を実施した。RNA-シーケンスとRT-PCRにより遺伝子発現を解析した。 結果と考察:DEN群では、15匹のラットが生存し、そのうち9匹が肝硬変を発症し、7匹がHCCを発症した。感染DEN群では、生き残った17匹のラットすべてが肝硬変を発症し、15匹がHCCを発症した。肝硬変とHCCの発生率は、DEN群よりも感染DEN群で統計学的有意に高かった。発現差のある遺伝子についてKEGG経路解析を行なったところ、炎症関連経路で統計学的有意に上昇した。また感染群および感染DEN群では、肝前駆細胞マーカー(CK19、SOX9、EpCAM)が統計学的有意に上昇した。以上より、CS感染が肝前駆細胞の増殖を刺激することにより、ラットモデルにおけるHCCのリスクを高めることが明らかになった。慢性炎症は肝細胞増殖とHCC幹細胞への分化を活性化し、HCCを引き起こす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で既に得られている生体試料の解析を進めており、一部の研究成果について国際学術雑誌に論文を発表した。新たに得られた実験結果を基にオンライン会議などを介して海外共同研究者と討論している。したがって、おおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の終息を待って相手国訪問の予定している。また、既に得られているデータ・試料の解析結果を基にオンライン会議などを介して共同研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)COVID-19の影響により、相手国訪問や学会の中止および消耗品の入手遅延により、旅費及び物品費に次年度使用額が発生した。 (使用計画)消耗品の購入や海外現地調査旅費に使用する予定である。
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