研究課題/領域番号 |
22KK0161
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清野 健 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40434071)
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研究分担者 |
金子 美樹 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (10795735)
重松 大輝 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50775765)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2028-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス罹患後症状 / 嗅覚異常 / 長時間相互相関 |
研究実績の概要 |
ウクライナの首都キーウに住むAnton Popov先生(ウクライナ工科大学)らと,毎週遠隔会議を実施し,共同研究の打ち合わせを行うとともに,ウクライナの状況を確認した.キーウでは,パトリオットなどのミサイル防衛システムがある程度機能し,ロシアからのミサイル,ドローン攻撃を高確率で迎撃できているということであるが,ロシアからの断続的な攻撃は続いており,現在も大規模攻撃の危険性がある.そのため,日本からウクライナへの渡航は断念した. 遠隔会議に加えて,Bohdan Vodianykらが大阪大学に1ヶ月滞在し,新型コロナウイルス罹患後の嗅覚異常の有無による脳波特性の変化に関する共同研究を実施した.この研究では,キーウ大学のIgor Zyma先生らが計測した脳波データを分析した.合計51人のボランティア被験者が研究に参加し,COVID-19症状の重症度と病気の経過に基づいてこれらの被験者は,3つのグループに分けられてた:重症(n=20),軽症(n=21),健常対照群(n=10).これらの被験者に対し,3種類の嗅覚刺激を提示し,その間の脳波を計測した.嗅覚刺激は,アンモニア(三叉神経臭物質),酢酸イソアミル(嗅覚臭物質),ヤママツエッセンシャルオイル(混合臭物質)を用いた.各刺激は60秒間呈示された.これらのデータを,我々が開発した長時間相互相関解析法を用いて分析した結果,新型コロナウイルス罹患後の嗅覚異常の有無により,脳部位間の長時間相互相関が変化することが見いだされた. また,血液検査などに用いる遠心分離機で観測される不安定振動についても分析した.経験的モード分解とフラクタル解析を用いた解析法を開発し,回転周波数に依存した振動モードの不安定性を特徴付けた.本成果を論文にまとめ,学術誌Fractal and Fractionalに国際共著論文として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス罹患後の嗅覚異常について,脳波解析に基づく評価を実現できたことは大きな成果である.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,新型コロナウイルス罹患後の嗅覚異常が脳波特性に与える影響について研究を進める.前年度は,嗅覚刺激の継続的な提示を行った際の,脳部位間の相関に注目した解析を行った.しかし,匂いに対する脳の反応は,新規の嗅覚刺激の検出と認識,匂いへの慣れといった段階に分類することが可能である.そのような匂いに関連した脳活動を,より詳細に分割した解析を今後行う.また,前年度用いた脳部位間の相関の解析法では,グレンジャー因果のような因果関係は評価できない.今後は,長時間相互相関においてもグレンジャー因果を評価可能な方法論を開発する. 戦争ストレスの影響評価については,ウェアラブル心拍計を用いて,可能な範囲で計測を実施する予定である.ロシアからの無差別なミサイル,ドローン攻撃は,通常夜間に行われる.そのため,睡眠が阻害され,不安による自律神経障害が発生している可能性がある.ウェアラブル心拍計を用いて計測された心拍変動,身体活動量を分析し,自律神経評価,および,概日リズム評価を行う.
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