研究課題
モンゴル南部に点在する湖沼群では、乾燥化に伴い有害重金属であるウランやヒ素が湖水中に濃集することが報告されている。本地域は東アジアにおける重要な黄砂発生源の一つである。そのため重金属に汚染された砂塵が長距離輸送され、越境汚染を引き起こす可能性がある。本共同研究はモンゴル乾燥域において生じている土壌(砂塵)重金属汚染の実態を明らかにすることを目的とし、土壌中の重金属の溶出性、重金属汚染の空間分布、汚染土壌の飛散性の検討を行う。6月、12月、3月にモンゴル南部の乾燥地帯に位置するOlgoy湖、Boontsagaan湖、Tsagaan湖、Taatsiin Tsagaan湖、Ulaan湖、Bayantukhum湖、Balgas Ulaan湖周辺から塩および土壌試料を採取した。また、バックグランドとして、2か所の砂丘より砂試料を採取した。本年度は6月に採取した試料について、逐次選択抽出により重金属の汚染状況と溶出性を検討した。その結果、バックグラウンドである砂丘の砂と比較すると、湖周辺の土壌はヒ素およびウラン濃度が高い傾向があることが認められた。特にOlgoy湖ではヒ素濃度が8倍程度まで高い土壌が分布していた。また、Tsagaan湖およびTaatsiin Tsagaan湖ではウラン濃度がバックグラウンドよりも10倍以上高い土壌が認められた。なおヒ素は土壌中に比較的溶出しにくい形態(鉄酸化物への吸着)で存在しているのに対し、ウランは主として弱酸で溶出する化学形態で存在していることが認められた。Himawari-8の衛星画像解析に基づき、黄砂発生時期に上述した湖沼からダストが輸送される可能性の高い地域2か所(BaruunbayanulaanおよびBulgan Omnogovi)を選定した。3月にこれらの地域にハイボリウムエアーサンプラーを設置した。
2: おおむね順調に進展している
モンゴル南部に点在する塩湖周辺から網羅的に土壌を採取し、重金属の含有量および溶出性の検討を行うことができた。また、汚染土壌の飛散性評価のため、黄砂発生時期の前にハイボリウムエアーサンプラーを設置することができた。
異なる季節に得られた土壌試料の重金属分布状態を明らかにする。また、3月~5月の黄砂発生時期に採取した大気粉塵試料の重金属分布状態および溶出性を検討する。
モンゴルにおいて採取した大気捕集試料を年度内に測定を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は本試料の分析および学会のおける成果報告に利用する。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
SOLA
巻: 18 ページ: 225~230
10.2151/sola.2022-036
Water
巻: 14 ページ: 1916~1916
10.3390/w14121916